駿弥くんの異常性とデートに向けて
貴斗視点です
「……ふあぁ、満足満足。今日もいい議論ができたね、駿弥くん。お疲れさま。」
「いえ、こちらこそ有意義な時間でした。また機会があれば、ぜひ。」
「もちろーん。……にしても……。駿弥くんはほんと面白いよね。俺、駿弥くんのこと気になっちゃうなぁ。ねぇ、何でそうなったの?」
これで幾度目かになった駿弥くんとの討論会。相変わらず小難しい話題を持ち出しては、初音を介して俺と景介に接触してくる駿弥くんに、俺はそろそろ頃合いだろう、と話を切り出した。
これまでに調べた駿弥くんの背後に、これほどまでの知識を有さなければならないほどの切迫した事情は見受けられなかった。これは、茶戸家に不利益をもたらしうる存在ではないという安堵と、事情もないのにこれだけの知識を持つ彼への不審感を感じさせた。
俺らと関わり合いにあるのなら、少しの不安も残せない。それがいつ、どこで弱味になるか、争いの種になるか分からないから。駿弥くんがこのまま高頻度で俺らと会うというのなら、はっきりさせておきたいところだ。
明るく、軽い調子で聞いた俺に、駿弥くんはお決まりの無感動な表情で答えた。
「俺が無能であることを、周囲は認めない。それだけです。」
「……へぇ。キミは今でも十分すぎるほど有能だと思うけど?」
少なくとも、高校生に似つかわしくないほどには。
言葉の裏の、そんなニュアンスを感じたのかそうでないのか、駿弥くんは荷物をまとめると、立ち上がりドアの方へと向かった。そして、廊下に出る前に立ち止まると、振り向いて、俺と景介に宣戦布告をしてきた。
「センパイ、学年を越えていようと、俺はセンパイたちを抜かし、この学校で最も優秀であると全員に認めさせます。それが、周囲から期待される、正しき藍峰駿弥の姿なので。では。」
無愛想に去っていく駿弥くんから目を離し、数瞬沈黙の後、俺は堪えきれない笑い声をあげた。
「ふふ。……ははっ、駿弥くんも……っ!大きく出たねぇ!俺と景介を越えてNo.1なるって……っ。くふっ。」
「……踏み込むには時期尚早だったんじゃないか?」
いまだ腹を抱えて笑っている俺に、景介は少し呆れた風に聞いてくる。純粋な疑問なんだろう。でなくば、景介が俺の為すことに変なケチをつけるとは思えない。俺は素直に意図を伝えた。
「景介も知ってる通り、彼、すごく変じゃん。ただ俺の彼女のクラスメイトって枠組みの中にいるならともかく、向こうが積極的に俺らと接触してくんだもん。なら、不安要素は潰さないとね。」
「……にしてもだよ。今の駿弥くんの状態で、俺らに話すわけないって、貴斗も分かってただろ?」
「まぁね。でも、だからこそだよ。はっきり言って、駿弥くんのあれは異常。それはお前も察してるはずだよ。」
俺の指摘に、景介も眉を寄せて言いづらそうに賛同してきた。
「そりゃ、な……。高校生があそこまで感情を出さなくなるなんて、異常以外の何者でもない。」
「それが、俺らと関わりを深めて、普通になってった時、異常だった理由なんて、聞ける?……フラッシュバックなんて起こってどうにかなられたら面倒だよ。」
駿弥くんのあの知識量が、ただの努力の末のものとして。それとあの無感動さとは繋がらない。ああなってしまった要因が必ずあったはずだ。努力したことと感情が動かなくなったことが某かで結び付いていたとしても。
さっきの駿弥くんの口ぶりでは、暴力的なことや犯罪的な事由はなさそうだったけど、だからといって、努力したの一言では済みそうにないなにかがあるのは確かなようだ。
あっちが接触してくる以上、双方に対して対策を取るのは決定事項。ならば、最も有効な手を選ぶために探るべきことは探っておかなくては。
「……ほんとお人好しだよなぁ、お前は。」
「えー、あんまり嬉しくなぁい。さ、初音が待ってるし、俺らも帰ろ。そうそう、クリスマスまでに初音とのデートプランを考えないと。今年の年末は、いつも以上に忙しいからね。」
「クリスマスなら、どっか夜景のきれいなところでも行くのか?」
「夜ねー。それも悩むよね。初音が緊張しない程度にしないと。」
さっきまで話していた駿弥くんのことはすっかり頭の片隅に追いやられ、俺は景介とクリスマスデート談義に花を咲かせた。
あと1ヶ月と少し。第2段階の方も動きが見えてきている。年内に、もしかしたら決着がつくかもしれない。そうなれば、初音の心も手に入れるのも、きっと近いだろう。
次話から初音視点が始まります




