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新たなクラスメイトはどんな子?

初音視点です


今話にある論文に関してですが、一応調べて書いてますが、ネットに書いてあったことをさらりと読んだ程度なので、誤解や間違いなどがあるかもしれません。

もしそのような点がありましたら、ご指摘いただけると幸いです。

これ以降にもそういった話を載せていきますので、間違いなどがありましたら、ご指摘ください。

「……てわけで、転入生だ。仲良くしろよ。」


少し不機嫌そうに畑本先生が紹介するのは、昨日会った転入生の藍峰駿弥くんだ。先輩や会長と難しい話ができるほどの頭の持ち主。

藍峰くんはちらりと教室内を見回すと、無愛想に名前だけ言って、さっさと席に着いてしまった。窓際の1番後ろ、私の席からは少し遠いところだ。


「転入生だって、初音、真琴。」

「珍しいよね。」

「うん。どんな子なのかしら。」


ユキちゃんも真琴も、転入生をチラチラと見ながら話題に上げている。

駿弥くんは誰と話すでもなく、静かに本を読んでいる。題名を見てもどこの言語で書かれているのかも分からないけれど、難しそうだ。やっぱりすごい。日本語訳がついていそうでもないのに、その目は止まることなく動いている。


「……ちょっと話してみない?」

「え?今本読んでるのよ?迷惑でしょ。」

「えー、でもせっかくだしさぁ。ねね、初音。行ってみない?」

「あ、えっと……うーん……、次の休み時間にしよう。ほら、もうすぐ授業始まるよ。」


私が時計を指差すと、ユキちゃんも納得して頷いた。真琴も賛成らしい。

にしても、何を話題に話そう。昨日の様子を見れば、難しい話には食い付きそうだけど、生憎私にそんなトークテーマはない。……先輩や会長になら、興味を示すのだろうか。

1時間目を終え、うずうずと目を輝かせるユキちゃんと真琴と一緒に、駿弥くんの元へと向かった。


「しゅ、駿弥くん。」

「……昨日の。後ろは?」

「あ、紹介するね。クラスメイトの、高山雪乃と、朝宮真琴。ユキちゃんと真琴だよ。」


ちらりと私に目を向けた駿弥くんに、ユキちゃんと真琴を紹介する。興味薄そうに2人を見ると、駿弥くんは再び私に目を向けてきた。昨日会ったからだろうか、先輩と会長効果だからだろうか。私のことは覚えていたようだ。


「は、初音。昨日って?」

「あ、そうなの。実は昨日たまたま知り合って。覚えててくれたんだね。ありがとう。」

「いや、あのセンパイたちと一緒だったから印象深かっただけ。で?何。」


用がないなら散ってくれ、とでも言いたげな瞳に、少し気圧されてしまう。慌てて話題を探し、昨日の先輩たちの会話を思い出した。


「せ、先輩たちが!駿弥くんのこと褒めてて……。」

「……センパイたちが?何て。」


先輩という言葉に、少し興味が出てきたみたいだ。他人の言葉を勝手に言うのは忍びないけど、仕方ない。


「えと……私が言うことじゃないんだけど……。着眼点は悪くないって。情報も集めるのも理解もいいって言ってたよ。……その、すごく、能力が高そうだって。先輩も、会長も。」

「……あんた、あの2人に連絡とれるの?」


私が言ったことに、駿弥くんは少し考えると微かに笑みを浮かべると、そう私に確認してきた。

嬉しそうな、楽しそうな目の色でこちらを見た駿弥くんに、一瞬返答が遅れながら頷いた。


「え、あ、うん。とれ、るよ?」

「話したい論文があるから時間のあるとき話したいって、言っといて。」

「分かった。えっと……、また難しい話?」

「……『集合行為論ー公共財と集合理論』。マンサー・オルソンって政治経済学者が1965年に出したやつ。制度派経済学って分野の話。……分かる?」

「えと……む、難しい話なんだね。集合、行為論……。うん、先輩たちには伝えておくね。」


予想以上に難しそうな題名に、少し……いや、だいぶ引いてしまう。とりあえず私はまた用無しだ。こちらとしても、先輩たちを引き受けてくれるのなら少しは気が抜けるから、是非もない。


「よろしく。他は?」

「あ、え、えっと……ゆ、ユキちゃん何かある?」

「あ、藍峰くん、難しい話知ってんのねぇ。」


少しだけ目を泳がせながらユキちゃんが話を振ると、駿弥くんは何でもないようにボソリと言った。


「こんなの、1回読めばすぐ読める。」

「……すご。駿弥くん、あんたすごいね!ねぇ、愛知のこと教えてよ。私、都内から出たことないから聞いてみたい!」

「ユキ、もう時間よ。藍峰くんだって、自分の時間欲しいでしょ。ごめんなさいね、藍峰くん。もう休み時間も終わるし、私たちも戻るわ。また話、聞かせてちょうだいね。」


真琴の言葉に何を返すでもなく、駿弥くんはすぐに本へと目を戻した。

本を読んでいても楽しそうでもないのに、何で読んでるんだろう。

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