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進展する仲と計画

景介視点です

お嬢を自宅まで送り届け、俺たちも帰宅した。夕飯までは仕事だ。若の部屋まで書類を取りに行くと、若は俺を室内に招き入れた。その様子は少し嬉しそうに見えた。


「失礼いたします、若。ご用は。」

「用って程でもないんだけどね。んふっ。今日は大きい収穫があったね。初音が俺の意に染まろうとしてきた。第2段階に入れそうだね。」

「えぇ。……あの時の若のお言葉に、お嬢が傷ついたように見えたのは、私の錯覚でしょうか。」


若の嬉しそうなご様子に、俺も相好が崩れる。

あの時に感じたことを若に問うと少し驚いたように目を瞬かせ、本当に?と聞いてきた。珍しい、気づいておられなかったようだ。


「えぇ、私にはそう見えました。……まぁ、私が都合のいいように捉えた可能性もございますが。」

「……いや、だとしても、景介がそう感じたんなら、何かしら初音に変化があったんだと思うよ。……そっかぁ、初音は何に傷ついたのかなぁ……。惜しいことしたなぁ……。」


ブツブツと呟きながら記憶を探るように考え込んだ若は、しばらくの後、断念したようにため息をついた。確かに、若の目線はあの時、お嬢の手には向いていなかった。目に入っていなくても不思議ではない。

……なぜ俺はこの記憶を若にお譲りすることができないのか……!俺だけが持っていてもどうしようもないのになぜ……!若がお知りでいた方が余程若がお喜びになるのに……っ。

内心血涙を流さんばかりに悔いてると、若も苦い顔をしながらもう一度大きくため息をついた。


「俺としたことが、初音の心情表現を見逃すなんて。初音の全てを俺のモノにしたいなんて言っておいて、取り溢してたんじゃザマないよ。」

「私も、その場で若にお伝えするべきでした。不手際をいたしまして、申し訳ございません。」

「いや、景介は悪くないよ。俺も、初音を手に入れて驕ってたみたいだ。でも、初音がそんな風に変わってるなら、計画も前倒しにできるかもね。景介、第2段階の準備しといて。相手は景介に任せるよ。」

「承知いたしました。……卯次はいかがでしょう。あの程度の勢力ならば、さほどお嬢に被害が出ることなく済むかと思います。」


若が次の段階に入るとおっしゃった。次は少々危険が伴うが、うまくいけばお嬢に、若が頼りがいのある男だと思わせることができる。重要な局面だ。

今の勢力図と状況から、適当な組を選ぶ。あまり強い力を持つところを選んで、結果お嬢を危険に晒すなんていうのは愚かの極みだが、弱すぎても計画の意味を為さない。あくまで、お嬢の危機を若が守るっていうのが大事なのだから。


「そだね。うん、そこでいこう。ついでに江徒の勢力も多少でも削れたら削っときたいよね。」

「はい。うまく噂を流しておきます。」


どのように噂を流そうか。内容によっても、今後の流れはどうとでも変化してしまうだろう。若にとっての最善の流れに運ぶためには、どんな内容にすべきか。頭の中でいくつもの案が浮かび、それを1つずつ精査していく。

……うん。これでいいだろう。後で詳細な計画書を作成しなければ。

ご機嫌な若に俺も嬉しく思いつつ、若のために考えをまとめていく。これから始動する次の一手が、若とお嬢の仲をより一層強固なものにするためのものになるように、俺も力を尽くさなくては。

次話から初音視点が始まります

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