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俺と親父の盤上遊戯

貴斗視点です

それから俺と景介は、互いに仕事のフォローをしながら目の前に堆く積まれた書類を片付けていた。


「若、こちらの書類もご入用でしょうか。」

「あ、そうだね。ありがとー。……ん、景介、これ欲しいでしょ。」

「……そうですね。ありがとうございます。……若、私の父に関してですが。」

「んー?なんか動きでもあった?」


2人でパソコンに向かい、手は止めないまま話を続ける。

親父の方で何かあったようだ。親父の右腕である景介の父親の景太郎おじさんが動いたということは、重要な案件ということ。……まぁ、十中八九検討はついてるけど。

しかし、俺にだって頼れる相棒たる景介がついている。特に、情報戦において、景介は景太郎おじさんと並ぶツテと力を持っている。向こうの動きはほぼ筒抜けと言っていいだろう。もちろん、向こうにもこっちの動きは筒抜けだろうけど。

その景介は、良くも悪くも俺に忠実。何か親父側の重要な、俺が知っていた方がよさそうな動きや情報を知れば、親父の許可など取らずに俺へ報告してくる。それで俺と親父は互いに牽制し合ってるのだ。下手なことをしたら、いつでもその勢力を削れるんだ、と。そうして、俺たちは程よい緊張感をもって親子をしている。親子で何をやってるんだと言われても仕方ないが、これも俺と親父のお遊びの一種だ。それに景介たち親子も乗っかってるだけ。なんて平和な戦争だろうか。


「お嬢の件で少々。親父が父に指示し、お嬢の家周辺を張らせているのが確認できました。」

「あー、やっぱりね。親父がやらないわけないし。オッケー、あんま初音の家の近くで無茶はできないってことね。」

「えぇ。お気をつけください。おそらく、若が無茶をなされば、構わず手を出す輩が多数任についているようですので。」

「親父の陣営は手が早いからなぁ。殴ればいいってもんでもないのに。さすが親父の配下だよ。野蛮なとこが、ほんともーそっくり。」


何人か着任していそうな組員の顔を思い浮かべ、笑い声を上げる。茶戸家の若頭である俺に忖度することなく、親父の指示のみ聞く人たち。俺でいう景介のようなものだ。

親父はどちらかというとパワーゲームが好きなタイプだ。喧嘩も抗争も、細かい策略を巡らせるより正面から堂々とやり合いたいという考え。対して俺は、もちろん単純に力比べをする喧嘩も好きだけど、頭脳戦の方が得意なので、策略も戦略も、情報を隅々まで集め、一から十まで細かく決めていった方が気が楽だと考えている。だから、ここでも親父とウマが合わない。と同時に、親父に付き従う人たちの中にも、ウマが合わないひとがいる。その人たちが初音の家についてると聞くと、少々厄介で、げんなりする。若頭という立場に阿らないって点じゃ、好ましいんだけど。


「父も、この件に関してはストッパーに回るつもりはないようですね。抑えられる際は無論抑えますが、あまり大立回りはなさいませんように。」

「分かった。……ま、親父が見てんなら、襲撃にも対応しやすいしね。可能なら連携していこう。」


親父が介入してくるというのなら、これまで以上に遠慮なく巻き込んでいくだけだ。権力を持つ駒なんて、便利に使わずしてどうするのか。

親父の出方を予想し、頭の中で盤上の駒を動かしていく。今の時点での親父は概ね味方とみて問題ないだろう。敵には回したくない。それは色々と対応が面倒になる。少なくとも、次の一手を打つまでは、俺の味方で、俺の行動を容認してくれる存在でいてもらわなくては。

次話から景介視点が始まります

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