先輩と会長ってお仲間さん……なんだね……
初音視点です
「……か、会長……。会長はどうして、先輩の、その……側近、を?」
私は、先輩と会長の関係性を知るべく、会長に聞いた。もし会長が手伝ってるってだけなら、そう言うはずだ。
しかし、そんな私の期待を裏切るように、会長は嬉しそうに笑みを深め、勢い込んだように話始めた。
「おや、興味を持っていただけましたか。少々長くなります。……あれは私と若が小学6年のときです。若はその高貴なるお立場故、常に御身を狙われていました。幸い、若の相手にもならない雑魚でしたので、怪我をされることはありま」
「景介、ストップ。景介の思い出話なんてどうでもいいでしょ。」
「……失礼いたしました。ともかく、私は若に多大なる御恩があり、また若の素晴らしさに心の底から敬意を表し崇拝し、その輝かしい道のお手伝いをするべく、畏れ多くも若の側近という役をいただいている、という訳です。」
「……。」
「また詳しい話は、時間のあるときにいたしましょう。」
こんな様子では、会長はアテにならない。
会長の口ぶりに、相談相手が1人消えたことを悟った。むしろ、下手なことを言ったら、先輩ではなく会長にどうにかされてしまうかもしれない。
「……会長が、先輩のことをとても大好きなのは伝わりました。」
「景介?初音ドン引きじゃん。やめろって言ってんのに……。初音、違うからね?景介が勝手に言ってるだけだから。俺はそんな大層なモンじゃないから。構えないで、気楽に考えて。」
目を泳がせながら言った私に、先輩は慌てたように言い連ねた。今までの余裕のある振る舞いからの変わり様に驚いてしまう。何にそんなに焦ってるのか、色々と言葉を言い連ねる先輩に目を丸くしていると、会長が微笑みながら場を収めてくれた。
「若、お嬢もきっとお分かりですよ。話をいたしましょう。」
「……お前が発端だろ……。えっと……あぁ、そうだ。初音、1つ注意してほしいことがあるんだ。」
「注意すること……ですか?」
「うん。景介は学校と家で違うっていうか、性格を変えてるっていうか。変わってるのは分かるでしょ?」
「はい……。どうっていうのは言葉にしにくいですけど……。」
先輩の言葉にチラリと会長を見ながら答える。
優しそうな笑みも変わらない。口調は違うけど、この会長が高圧的とか、怖いと感じるわけではない。どっちの会長も外見も大きく変わってるわけでもない。清潔感のある格好をしている。
パッと見の印象は変わらないように見えるのに、違うのは分かる。別人過ぎて絶望的だ。到底、先輩を遠ざけるための協力なんて頼めない。
「それは俺からの指示で、景介に普通の学生として生活してほしいからなんだ。景介は早くにこの世界に関わっちゃったからね、普通を知ってるのは大事だと思って。」
「私は若以外の誰にどう見られようとそう興味はないのですが、どうやらこの態度は他人の目には奇異に映るようでして、私がそのように見られるのを、若は良しとされません。」
「当然でしょ?長年つるんできた奴をそう見せたがる奴なんて、どこにいるんだよ。」
「配下たる私の体裁など捨て置いても構わないと、何度申し上げてもこの調子で。私の外聞にまでお心を向けられるとは。私には過ぎたことです。」
大変だ、思ったより数倍会長が味方になりそうにない。先輩と会長のやりとりに、私は両手を握り締めた。私の味方になってくれそうな人は、少なくともここにはいない。下手なことをしたら、私なんてすぐどうにかされてしまうだろう。その事実に、背中を冷たい汗が垂れた。
一通り言い合い終えたのか、2人は再び私に目を向け、話を再開した。
「で、お願いなんだけど、初音も家での景介が外にバレないようにしてほしいんだ。」
「……大丈夫です。絶対言いません。ていうか、私が家での会長のこと言っても、信じる人なんていませんよ。」
「擬態がうまくいっているようで、重畳です。」
「全然うまくなんていってないでしょ?仮面なんて何回も外れかかってるくせに。分かってる?それを気をつけろって言ってんの。初音も、もし景介の仮面が外れそうになってたら言ってあげて。初音から漏れる心配はしてないけど、積極的に外そうとするやつがいるから。」
会長を睨みながらそう言う先輩に、会長は穏やかな笑みを保っている。
家の会長を知ってしまったからか、見るとその笑みも少し胡散臭く見えてしまう。今までは確かに優しそうだと思っていたはずなのに、その印象が180度変わってしまったことが少し悲しくなった。
「俺の名前出せばすぐ仮面つけるから。景介、初音の手を煩わせないでね。」
「承知しました。お嬢、お手数をお掛けします。若の御名を聞けば、戻しますので。」
「……そ、そうですか。」
さらに笑みを深める会長に、また少し、恐怖に身が竦む。味方と思ってた人が味方じゃなかったことに、思ったよりもショックを受けているみたいだ。
「初音がそう言ってくれてよかった。景介が学校で変なことをするとはないと思う。もし何か困ったことがあったら、景介に言ったらきっと助けてくれるよ。」
「私の能う限り、お力になりましょう。」
「……もし会長のお力を借りたいことがあれば、頼りにさせてもらいますね。」
柔らかく微笑む2人に向けて、引きつりそうな口元を無理矢理上げ、私も笑みを返した。
きっと頼りにすることなんてないけど、形だけでもそう言っておけばいい。だって先輩は何度も頼れと言っていたのだ。きっと拒否するより受け入れた方が先輩にはいい印象を持ってもらえると思う。私は、先輩のことを拒まない、先輩の言うことは聞く、先輩にとって都合のいい存在になるんだ。先輩にとって、側に置くに好ましい存在になるんだ。
そしたら先輩は、私を疎ましく思わないでしょ?
次話から貴斗視点が始まります




