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諦めきれない

景介視点です

「景介、明日からのことで打ち合わせしたいんだけど。」

「承知しました。この書類が片付いたらすぐに向かいます。」


若からの声掛けに、俺は一層スピードを上げ書類の処理に勤しんだ。

明日から、とうとう事務所に一度帰ることになっている。そこで若はお嬢と……。ある意味でとても大事な日。それでなくても、若が一時的に抜け、俺はここで戦線離脱。綿密な打ち合わせも必要というものだ。


「お待たせいたしました、若。」

「ん。じゃあ、まずは今の進捗から。予定通りまでは進んでる、でいいんだよね。」

「多少の遅れが認められますが、まぁ想定内といったところでしょうか。」

「オッケー。明日は昼くらいに出るんだけど、それまでに取り戻せるかな?」


まずは現状確認。若からの問いに、進み具合を思い浮かべながら報告していく。

明日から3日間は俺も若もいない。その間、色んなことの進みが確実に遅くなることを思えば、可能なら巻きで計画が進んでいる、くらいが理想だったかもしれないけど、現状は若干押しているくらい。それも今更言っても仕方ない。


「明日は、俺と景介、あとドライバーの柳田だけで戻って、夕方には事務所に着く予定だよ。着いたらまずは、孝汰とこの前の件の確認をするよ。」

「はい。孝汰坊っちゃんにはすでに連絡をしてありますので、速やかに聞き取りが可能かと。」

「ありがと。……で、2日目は俺1日留守にするから。景介はどうする?」

「私は事務所でできることを片付けておきます。あちらに残る組員と情報共有もしたいので。」


そう伝えると、若は少し思案顔で黙り込んだ。

……何か、俺に任せていただける仕事があっただろうか。もちろん、任せていただけるのであれば、全力で取り組むけども。あっちに戻った俺の一番の仕事は、情報収集だと思っていたけど、別の重要な仕事?


「……あぁ、別にそれ優先でいいよ。ただ、夕方くらいに初音を迎えに来てほしくて。」

「あ……。確かにそうですね。承知しました。場所と時間を教えていただければ、その通りにお迎えに上がります。」

「ん。ありがと、よろしくね。」


お嬢のお迎え。大事な任務だ。頭の中でスケジュールに書き加えていく。若がどこでどのようにお嬢とお話をされるのか分からないけど、迎えに来てほしいということは事務所外で。さらに、若ご自身が事務所まで送り届けず、そのまま解散するってことだ。お嬢を無事に事務所まで送り届けないといけないってことは、道中の安全について、多少は調べておかないと行けないな。


「初音を景介に引き渡した後は、俺そのままこっちに戻るから。なんでもかんでも景介に押し付けて悪いけど、初音のフォローも頼んでいい?」

「もちろんです。若にご用命いただけるのであれば、どんなことでもやりましょう。なので、お嬢のことはご安心を。」

「うん。あとは……あとは、もう大丈夫かな。景介はある?」


いつもより覇気なく力ない笑みを浮かべている。そんな若の少し消沈した様子に、声をかけようか迷って……おずおずと口を開いた。


「若、その……ご無理をなさっておいででは?」

「……ちょっとね。自分でもびっくりするくらい、未練がましいみたい。明日なんて永遠に来なければいいのになんて思うくらい。なんかもう、呪いみたいだね。」

「……若がお決めになったことなので、差し出口かもしれませんが。私は今でも、お嬢と別れるのは反対です。若のお力は、お嬢あってこそ存分に発揮されるものではありませんか?お嬢の存在こそが若にモチベーションを与えるものと思っていますが、相違ありますか?」

「……。」


俺の方こそ未練がましいな、と思いながらも、散々続けた説得をまた口にした。

これは若が決断されたこと。俺は若からの命令を粛々と執行するべき。不要な異を唱えるべきではない。とは思うけど。ここで俺が何も反論せず成り行きを見守るだけでは、若は今以上に何にも執着を持たなくなってしまいそうで。

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