嬉しい連絡
初音視点です
「え、本当ですか!?」
『うん。大事件もあったし、心配だから1回戻るよ。3日後の夕方には着けるし、次の日は1日フリー。3日目の早朝には帰るけど、そっちにいる間はずーっと初音のそばにいるよ。』
貴斗さんからきた連絡に、私は喜々として声をあげた。
なんと、貴斗さんが帰ってくるのだ。しかも、1日お仕事なしで私のそばにいてくれるらしい。
貴斗さんと離れて、これまで一度も会わなかった。こうして連絡をとることも少なかった。それが、こうしてゆっくり会える時間があるなんて、嬉しすぎる。
『初音とゆっくり話したいなって思ってたから、戻れる時間が作れてよかったよ。空いた1日、デートしようね。』
「はい!」
『じゃあ、また3日後。楽しみにしてて。』
電話が切れてからも、嬉しくてしばらく胸が高鳴っていた。
何をしよう。久しぶりに会う。貴斗さん元気かな。少しでも休んでゆっくりしてほしい。けど、デートもしたい。
そう思いながら部屋でジタバタしていると、お兄ちゃんが部屋の外から声をかけてきた。
「初音、晩飯だぞ……って、何してんだ?」
「お兄ちゃん!聞いて、貴斗さんが帰ってくるんだって!」
「え、終わったのか?」
お兄ちゃんも驚きて目を丸くしている。
残念ながら、終わったから帰って来るわけじゃない。そうじゃなくて、と貴斗さんとの電話のことを話すと、お兄ちゃんも納得の表情で頷いた。
「やっぱ心配かけたよなぁ。あっちだって大変だろうに、こっちに帰って来る時間捻出してまで来るなんて……ほんとお前愛されてるよな。」
「え、やだっ。急に変なこと言わないでよ、お兄ちゃん。」
しみじみとそんなことを言うお兄ちゃんに、私は顔を赤くして叫んだ。
あ、愛……されてるなんて、そんな、恥ずかしい。もちろんすごく大事にされてるのは分かってるけど。
「なんだ、初音。まだ慣れないのか?」
「うぅ……。慣れないよ、いつまで経っても。貴斗さんみたいなすごい人に、大事にされてるなんて……どんな顔したらいいか分かんないし……。」
「いい加減慣れりゃいいのに。」
「分かってるよぅ……。」
私は熱い顔を手で煽ぎながら頷いた。
私がこうやっていつまでも子どもっぽいままだと、だめだよね。……もしかしたら、そのせいで貴斗さんにも余計な心配かけるし、いつまで経っても恋人としての進展もないのかも。
「うん、そうだよね。私も頑張らないと。ね、お兄ちゃん。貴斗さんが帰ってきた次の日のデート、お昼は私がお弁当とか作ってもいいよね。むしろ、作るべきだよね!」
「んあ?あー、まぁ作れば喜ぶんじゃねー?前回のも好評だったわけだし。また作るのか?」
「うん、そうする。メニューは、やっぱり貴斗さんは和食が好きって言ってたから、今回もその方向で決めたいんだけど、お兄ちゃんは何がいいと思う?」
私の相談に、お兄ちゃんは私と一緒になって考え込んでくれる。
お弁当の中身をどうするか。たったこれだけなのに、なかなかいい案が浮かばない。お弁当の中身を考えるのって、けっこう大変だ。
「デートするってんだろ?じゃあ汁物はナシだよな。普通の弁当の中身ってなんだ?」
「えっと……おにぎりとか?卵焼きと……唐揚げはどうかな。うーん……あんまりパッと思いつくものって少ないかも。」




