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内通者

貴斗視点です

画面に映し出された顔を見て、舌打ちをする。

茶戸本家事務局長。本家で何度も顔を合わせたことがある。そして、最近だと資料で何回も見た。

待ち望んだ、一方で非常にまずい情報だ。事務局長というと、事務方のトップ。握っている情報も多い。幹部格の中ではそれほど高い地位ではないけど、それでも幹部である以上それなりに信任を得ているということ。……じーちゃんが俺に怒るとは思わないけど、これで誤情報となって本家と亀裂が入るのも面倒だ。

もっとちゃんと調べてからでないとじーちゃんには言えないけど、親父には言っておいた方がいいかもしれない。


「景介はこいつの動向を中心に引き続き調査してて。俺、親父にこれ伝えてくる。」

「承知しました。ご参考までに、今の映像を共有しておきます。」

「よろしくー。」


パソコン片手に、俺は部屋を出る。ちらりと時計を見ると、部屋にこもってからだいたい4時間弱。まぁ、一息入れるにはちょうどいい頃合いだろう。


「親父ー、入るよー。」


間延びした声で呼びかけながら扉を開くと、親父が夕飯を食べながら書類を眺めていた。


「なんだ、貴斗。7時間籠もるって聞いたぞ。まだ4時間しか経ってねぇじゃねぇか。」

「親父に報告しとこうと思ってね。じーちゃんの。」

「……何か進展があったのか。景太郎、景太郎!」


親父が大声で呼ぶと、すぐに景太郎おじさんが部屋に入ってきた。その手には大量の書類が積み重なっている。おじさんも、俺や景介に負けず劣らずの処理量だから、今この瞬間も終わらせないといけない仕事はたくさんあるんだろう。


「どうされました、親父。……おや、若。今日は部屋籠もりと伺っていましたが、何かございましたか。」

「うん、ちょっとね。2人とも見覚えのある人だと思うんだけど。これ見て。」


そう言って、俺は持ってきたパソコンのファイルを開く。中には、景介が共有してくれた映像データが入っていた。


「これは……本家の事務局長殿ですか。」

「あぁ、あの胡散くせぇツラした厭味ったらしいおっさんか。俺、こいつ嫌いなんだよな。んで?こいつがどうした。」


俺が示した顔を見て、親父は眉を寄せたものの、意図を察したわけではなさそうだ。

別に親父も馬鹿じゃないし、(野生の)勘は鋭いんだから、分かってもよさそうなものなのに。親父の組の中での役割はそのカリスマ性で組員をまとめることだとしても、よくこの親父から俺ができたもんだ。

そんな親父とは違い、景太郎おじさんはピンときたようだ。


「本家の件ですか。」

「そ。3週間前、午法の本拠地付近で監視カメラに映ってた。まだ詳細はこれから調べるけど、これからこいつを内通者とみなして対応するつもり。」

「そーか。まぁ、そこらのことはお前に任せる。ジジィに言うのもテキトーにやっといてくれ。」

「何親父。やけに大人しいね。」

「……俺ぁちと疲れた。本家のゴタゴタに巻き込まれんのは。だいたい、俺は本家から出奔した身だしよ。知ったこっちゃねぇって感じなんだよな。」

「相変わらずわがままだね。まぁ、知ってたけど。分かった。じーちゃんにはいい時に報告しとくよ。でも、一応報告書とかは目通しといてよ。ウチの親組織なんだから。あっちがコケたら、こっちも対応しないといけないんだし。」


親父に釘を刺し、部屋を出る。

まったく、親父には困ったもんだ。親父が最初に見てた書類は、昨日の朝イチで渡したやつだ。今頃見てるなんて、親父ってばやる気なさすぎ。息子を馬車馬よりも働かせておいて

まあ、そこらへんは景太郎おじさんがうまいこと調整してくれるだろうから、心配はしてないけど。


「ただいまー。景介、進捗はどう?」

「はい。先程の件、事務局長のパソコン内のメールなどを確認していたのですが、少し気になるものが。」

「お、早いね。どれ?」


景介の示すものを覗き込み、内容を見ていく。

次から次に湧き出てくる問題に対応していくのは大変だけど、これも俺の選んだ道。


「じゃあ景介はそれ掘り下げて。俺もこっち終わらせて合流するから。」


俺のやってることでみんなが、初音が平穏無事でいてくれるなら、それ以上のことはない。それが俺のモチベーションだ。

次話から初音視点です

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