予定変更
景介視点です
「貴斗、初音さんの件、報告は。」
「ん。昼前には粗方終了して、もう病院での診察も終わったみたい。駿弥も手術は未明に終わって、今は病院で大人しくしてるって。これ、報告書。」
若が渡した報告書のデータが入ったUSBを見て、親父が嘆息する。
お嬢の救出をメインで行ったのは、向こうの組員と若や俺を含む数人の組員。親父はそれほどタッチしてはいなかった。それでも、若の抜けた穴のフォローで親父たちも骨を折ったと聞いている。無事解決して安心したんだろう。
「景介、舞菜ちゃんも巻き込まれたんだろう?怪我はないと聞いたが、他に配慮するべきことはないか?」
「本人から、寝付きが悪いって聞いてるよ、父さん。一応、電話で話した限りじゃ、そんなに深刻な感じじゃ無さそうだけど、少し様子見が必要かも。」
「あれ。景介、いつの間に舞菜ちゃんと……。あぁ、休憩のとき?話せたんだ。」
「えぇ。夜明け前に送ったメッセージに通話で返信があったもので。それで、なぜ起きているのか聞いたら、寝付きが悪いと。」
あの後、舞菜は休めただろうか。1時間でも休んでくれればいいんだけど。
若や父さんと話しながら、頭の大部分を舞菜への心配が占めていく。たった30分程度の雑談で、襲撃された恐怖がなくなるとは思えない。舞菜とは、電話を切ってから連絡を取れてない。時間ができたら、様子を確認しよう。
その後は、お嬢救出の詳細を親父たちに確認してもらい、今後の処置についても話し合った。お嬢を監禁していた屋敷は現在、床板も引っ剥がす勢いで調査中。主犯格となる組は、組長を始め組員もその場にいた全員が茶戸家で捕らえてある。今も向こうの組員が情報を絞っているところだ。
「で、ウチで情報取ったら、警察に突き出すよ。罪状も十分にあるし、これで組長逮捕で、組も解散に持ち込めると思う。」
「そうか。……とうとう大事件になっちまったな。アフターフォローはしっかりしてやれよ。少なくとも、初音さんについては、お前が一番の適任なんだしな。」
「……うん。分かってるって。一応こっからでもフォローは入れるけど、今持ってる仕事巻きで終わらせて、初音に会いに帰りたい。次こっちから仕掛けるのって、申川の武器庫を壊滅させるやつだよね。それを半月遅らせて、往復込みで3日間。どう?」
若のご提案に、すぐさま頭の中でスケジュールを調整していく。
元の予定では、来週末に行うことになっていた。半月遅らせるとして、3週間後。若の抱えている仕事量は膨大。3日間も空けるとすると、相当詰めないといけない。
「貴斗、それは構わんが、必要以上の遅れが出るのは許容できん。お前の方で調整して、万事恙無く進むようにしておけよ。」
「分かってる。1時間、考えさせて。可能な限りリスクが出ないように調整するから。」
「ならいい。景介、悪いが、こいつのわがままに付き合ってやってくれ。」
「もちろんです。」
親父からの指示に頷き、俺と若は一時退出した。
若がお嬢と会うために3日間時間を取ると言うのであれば、俺の役目は、その3日間を若が憂いなくお嬢と会うための時間にできるようにサポートすることだ。




