手持ち無沙汰は苦手だ
駿弥視点です
「龍司が来たら、みんな仲良く三者面談といこう。それまでお前さんは、静かに寝てな。」
「はい。これからよろしくお願いします。」
病室から出ていく先生を見送り、素直にベッドに横になる。どうせ今はここから動けない。身体じゃなくて、頭を動かそう。
畑本先生はすぐ来るだろうか。俺の親が来る前に話して、口裏を合わせておきたいところだ。
貴斗たちにはどんな風に話が伝わっているのか。貴斗とも早めに話をしたい。今回の件がどう影響を及ぼして、どう解決していくのか、知らないといけない。
「あぁ、情報がほしい。情報が圧倒的に足りない。聞かないといけないことが多すぎる。畑本先生来てくれないかな。」
考えようにも、知らないことが多くて早々に思考が行き詰まってしまう。俺は手持ち無沙汰になって項垂れた。
ここ最近は、特に暇ができないくらい動いて考えていた。だからこそ、こうして急にできた時間の空きは、すごく扱いに困ってしまう。
「まだかな……。畑本先生……。」
現在の時刻は8時すぎ。もう学校が始まる頃合いだ。先生に今連絡がいったとして、下手したら昼、夕方になるかもしれない。さすがにそれでは焦れったい。
「……ていうか、俺こんな時間まで寝てたのか。普通に寝るよりも寝てた……。麻酔切れた後もずっと寝てたのか?」
通常、麻酔はそんなに長く効かない。もちろん、投与の方法で差はあるけど、足の手術で使われるものなら、2,3時間程度だったと思う。俺が撃たれたのは夕方だ。ついさっき手術終了、ではないだろう。まぁ、自覚できるほどには疲れも溜まってたし、麻酔が切れた後もそのまま寝てたのかもな。
そんなことをつらつらと考えていると、扉がノックされた。
「はい。」
「駿弥、俺だ。入るぞ。」
「畑本先生!」
待ちわびた先生の登場に、俺は声をあげて歓迎した。
これで情報を揃えられるし、俺がやるべきことも見えてくる。
「大丈夫か、お前。」
「はい。全然問題ありません。少し身体がだるいくらいです。」
「まぁ、手術の後だし、そんなもんか。許容範囲なんだな。」
安心したように表情を緩めた畑本先生に、俺も笑みを見せる。
今回はさすがに心配をかけた。これまでにないくらいの怪我をして、各方面に迷惑もかけただろう。ひとまず安心させることができてよかった。
「土田先生から、詳しいことは畑本先生に聞けって言われてるんですけど。今の状況ってどんな感じなんですか?宇咲さんや水輿さんは……。」
「水輿はあの後すぐに茶戸に保護されて無事だ。宇咲は……。今対応中だ。」
「対応中って……。何かあったんすか!」
言いにくそうに言葉を濁した先生に、俺は嫌な予感で頭がいっぱいになった。
対応中ってことは、俺にもできることがまだあるかもしれない。ここで寝転がっててもやることもない。何かできることがあるなら、少しでもやった方がよさそうだ。




