状況把握
貴斗視点です
『貴斗兄ちゃん、初音姉ちゃんの治療終わったって。怪我としては、顔の大きなアザ。殴られた痕だって。あとはふくらはぎに銃弾がかすめた痕。もう血は止まってるみたい。それも縫うまではいってないって。他に大きな怪我はないから、すぐに帰れるって言ってたよ。』
「……そ。分かった、ありがと。報告書まとまったら、こっち送ってね。」
昼を過ぎて、孝汰から連絡が入った。初音の怪我は心配はいらないという。俺は安堵で大きなため息をついた。初音の救出がこれで完了だ。
だけどもちろん、初音の顔にできてたあの怪我や足にできたっていう傷の状態もあるから、無傷とはいえない。俺のせいで初音には大きな怪我を負わせてしまった。
「……俺の、せいで。」
「若、良かったですね。お嬢が無事で。」
「……うん。だね。俺、初音に連絡してくる。後は頼んだよ。」
俺は部屋を後にし、人気のない場所へ向かった。初音に連絡をするのに、少し静かな環境がよかったから。
少し心を落ち着かせ、俺は初音の番号を呼び出した。
「もしもし、初音。」
『貴斗さん!』
「怖かったよね。顔に怪我してるの見たよ。足にも傷があるって聞いたけど、そこはどう?」
思ったよりも元気は初音の声に安心しながら、今の様子を聞いていく。本人としても、顔以外に特別痛いところはないようで、足の方は今はあまり痛くはないし、体調も悪くはないらしい。
「そっか。その怪我見てくれた医者って、土田のセンセ?」
『えっと……西岡先生ってお医者さんです。土田先生は今立て込んでるからって。』
「あぁ、駿弥の方だね。西岡センセも、こっちの事情分かってるから、そっちからも話は聞いておくね。」
『そうだったんですね。……駿弥くんは、どうですか?大丈夫ですか?』
「大丈夫。りゅーちゃんがすぐに対応してくれたからね。今はもう手術が終わって安静にしてるよ。」
俺の言葉に、安心したと息をつくのが聞こえた。
舞菜ちゃんの話だと、駿弥が撃たれたときはすぐそばにいたらしい。それなら、駿弥の状態が気にかかるのも当然だろう。
「初音、辛いかもしれないけど、今回のことの話を聞いてもいい?」
『はい、大丈夫ですよ。えっと……駿弥くんが撃たれたって分かってすぐに舞菜ちゃんと二手に分かれて逃げたんです。いろんな方に走ってたのでどこ通ったとかは分からないんですけど、あちこち行く間に、学校の近くまで来て、あとちょっとってところで銃の弾が足をかすめて倒れちゃって。それで捕まっちゃって、車に乗せられました。それであの捕まってたお屋敷に連れてかれたんです。』
「うん、すぐに連れてかれたんだね。」
初音の話を頭の中に書き留めながら先を促す。たまにこちらが聞きたい内容を示してやれば、比較的スムーズに話をしていく初音に、俺は穏やかに相槌をしながら聞いていく。
『それで、目を覚ましたら、4人の男の人がすぐに入ってきて。色々言ってきたんです。私を捕まえたら、貴斗さんたちを倒せる、とかって。』
「うん。」
『最初は黙って聞いてたんですけど、貴斗さんをバカにしてきたから……。つい、反論しちゃって……。そしたら、1回殴られて、髪掴まれて……侮辱的なことを言われました……。』
「侮辱的なこと?」
『……あんまり、言いたくない、ひどいことです。』
初音の悲しそうな暗い声に、瞬時に言われたことの想像がついた。風俗に、とかの生ぬるいレベルじゃない。人をモノのように扱うって下種の所業だ。
そんなことをすると、初音に言った奴がいる。




