休んでいる間に
景介視点です
「さて、やりますか。すいません、私の独断で若に休息を取っていただいてもらって。」
「いや。若のあの顔色は、俺たちも気になっていた。言ってくれて助かったよ。ありがとな、景介。」
「そう言っていただけて恐縮です。後ほど皆さんにも休息を取っていただけるだけの調整はしますね。もちろん、私も含ませていただきますが。」
俺の言葉に笑いながら頷いた4人に手早く次の指示を出して、俺は若に渡されたデータを確認する。
規模は中程度。突入先は敵本拠地。こちらの指揮は若をメインに現場に孝汰坊っちゃん。……カメラ?あぁ、若が状況を把握されるためか。
「さすが若、とても分かりやすい内容ですね。これなら……。栗原さん、若がお戻りになったら休息に入ってください。時間は45分程度でお願いします。その後は川岡さん、三条さん藤島さんと続いて、最後に私の順でいきましょう。」
「おぅ。俺らまでありがてぇ。おっさんに徹夜はさすがにちとキツイわ。」
「時間は短いですが、よく休んでいただければ。まぁ、その分急ぎにはなります。三条さん、カメラは藤島さんに任せて、私のサポートをお願いします。藤島さん、今見ているのはお嬢のいる屋敷の様子ですよね。大きな動きがないかだけ気にしていただいて、ついでに書類処理をお願いします。」
積み上がった書類をそれぞれに振り分け、自分も動きを早める。
まずは事務所との連絡だ。まだ装備品の確認が済んでいない。あまり派手にやるつもりは若にはないようだが、それでも武器となるものを持つ以上、管理は厳重にしないといけない。孝汰坊っちゃんと連携を取って、早く進めよう。
「もしもし、孝汰坊っちゃんですか。」
『あっ、景介兄ちゃん!貴斗兄ちゃんと交代?』
「はい。若には休息を取っていただいています。戻られるまでは、私が代理でやり取りを担当いたします。さっそくですが、人員は決まっていますか?」
孝汰坊っちゃんと必要な確認を重ねていく。若が戻るまでに少しでも進めて、若の負担を減らしたい。
『これで装備品は全部かな。他は何かあったっけ。』
「……いえ。これで大丈夫かと。後は、現地に着いてからの動きについて共有させてください。」
「景介、おまたせ。俺も今から入るよ。」
孝汰坊っちゃんと話していると、後ろから若が声をかけてきた。先程よりも幾分か顔色もよくなって、声も張りが出ている気もする。
もうそんな時間か。……あれから50分。若にと用意した休息時間からは多少短いが、まぁ良い時間だろう。
「若、休息は十分取れましたか。」
「ん。頭スッキリしたよ。孝汰?俺戻ったから。」
『貴斗兄ちゃん!おかえり、もう大丈夫?確認は今景介兄ちゃんとやり終わったよ。』
若に会話の主導権を渡し、俺はサポートに入る。その間に他の組員も順に休息に入っていき、早くも次は俺の番だ。手早く仕事に片をつけ、若に振り返った。
「では若、私も休憩に入らせていただきます。6時前には戻ります。」
「うん。ありがと、色々。これでなんとか朝イチで動けそうだし、遠慮せずゆっくり休んできて。」
現在の時刻は5時。後は事務所の方が装備品等の積み込みや移動などを含めた最終準備を終えるのみ。なんとか間に合いそうだ。
それでも若は、早く、と気が気でないんだろうな。他ならぬお嬢の安否がいまだ不明なのだから。




