連携が大事
貴斗視点です
頭の中で情報と対策をまとめ、1枚メモを書く。向こうの組員だけではなく、親父にもどう動くか伝えておかないと、途中で余計な口出しをされるし、仕事を回されかねない。。忙しいアピールはしておかないと。
「これ親父に渡してきて。集中したいから、邪魔したら半殺し。余計なことすんなって伝えて。」
メモと伝言を託し、次は連絡だ。携帯から孝汰の番号を呼び出し、コールする。
「あ、孝汰?」
『貴斗兄ちゃん!初音姉ちゃんのこと!』
「聞いてる。こっちでもう居場所も把握してるから。指示はこっちで出すから、孝汰には奪還の実行を頼みたい。」
焦燥感をにじませた声の孝汰に、端的に要件を伝え、落ち着かせてから話を進める。
孝汰が初音の拉致をすでに掴んでいるのは、おそらくりゅーちゃんからの連絡だろう。であれば、りゅーちゃんからある程度必要なことは伝えてくれてると期待できる。こちらからは、これからの話をすればいいだけだろうから、助かる。
「……てことで、周囲の施設。特に卯次と酉宮の拠点が近くにあるから、それも用心してね。見張りは忘れずに。」
『うん。』
「乗り込むときは、いつもの注意事項忘れないで。」
『後ろに注意、制圧後も油断しない、近隣の人に迷惑かけない。大丈夫、忘れてないよ。』
注意事項も話し終え、一息つく。あと話しておかないといけないことはあっただろうか。
「あ、そうだ。孝汰、誰でも良いんだけどさ、ボディカメラ着用して。俺と画面共有できるように。そしたら、状況見ながら指示出せるでしょ。」
『カメラ?うん、分かった。出発前に画面共有の時間作るね。』
「ん。行く人決まったらリストちょーだいね。頼んだ。」
あちらのことは孝汰に任せ、俺は再度報告を確認する。向こうの動きをサポートできるだけの情報をまとめておきたい。
「若、龍司さんから、若に繋いでほしいと。」
「俺?ん。……もしもし、りゅーちゃん?」
景介に渡された携帯に、首をかしげながら応じる。
りゅーちゃんとは景介が応対するって知ってるだろうし、俺に話ってことは何かあったのかな。
『茶戸、宇咲の捜索はどんな調子だ。』
「景介から聞いてない?もう場所は特定してるよ。今孝汰に連絡して、奪還の計画立ててるとこ。明日中には決着つけさせるよ。」
『湧洞からは順調だと聞いてたが……、もうそんなに進んだんだな。今対応してくれた救急隊委員との話し合いが終わった。警察にタレこまれるとややこしくなんだろ?とりあえず、落ち着くまでは大げさにしないよう頼んどいた。今日明日捜査されることはないと思う。』
「ありがとりゅーちゃん!助かる。今事務所に踏み込まれても困っちゃうもんね。」
りゅーちゃんからの報告に胸を撫で下ろす。
初音が拐われたのが一番の大問題だけど、それ以外にもたくさん悩みポイントはある。駿弥のけがもそうだし、救急車で搬送されたときに抗争が絡んでると知られたのも、実は面倒な問題だった。
一般人を抗争に巻き込んで大けがさせたなんて、茶戸家にとってはこの上ない醜聞。警察がこれをネタに家宅捜索となってもおかしくなかった。親父や俺といった責任者が離れてるタイミングっていうのも避けたい理由になる。りゅーちゃんがうまく対応してくれて本当に助かった。
『あと、今校長から確認の連絡が届いてる。どう伝えれば良い?』
「あー、もしかしてりゅーちゃん、部活放って来てくれた?」
『放り出したどころか、銃の発砲音がしたから校舎内退避まで叫んで、様子見てくるっつって飛び出してきたわ。』
「言ったねー。うーん……そうは言っても駿弥のけがは誤魔化せないしねぇ。しょうがないし、ヤクザの抗争までは言って良いかも。駿弥は巻き込まれたってことで。あんまり嘘ついても大変だし。でも、茶戸家が大々的に抗争してることとか、今回の件が相手の襲撃までは言わないで。無用な心配かけたくないし、俺の関係者だから狙われたってのも、言いふらしたくないから。」
『分かった。まぁ、お前の長期休校もうまいこと誤魔化しておく。その上で注意喚起はしておいた方がいいな。』
りゅーちゃんの言葉に頷き、今後の打ち合わせをする。話を合わせておいて、戻ったときに違和感ない話ができるようにしておかないと。
可能な限り、初音や舞菜ちゃんが周囲から浮かないように対処したい。俺と距離が近いというだけで敬遠する人が出ないとも限らない。俺のために初音たちが生きにくくなっちゃいけない。
「じゃあ、色々後始末頼んだよ。茶戸の名でやれることがあれば、バンバン使って。」
『おぅよ。宇咲のことはお前が総指揮をとるんだろ。もし必要なら連絡しろ。間に合うなら駆けつける。』
「うん、ありがと。よろしく。……景介。」
「はい。……龍司さん、引き続き駿弥の件で……」
「さ、こっちも進めようか。」
孝汰に大量の情報を送りつけたり、現状について報告を受けたりする。早めに動き始めて、迅速に初音を救出したい。
「待ってて初音。必ず助けるからね。」
次話から初音視点です




