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搬送完了

畑本視点です

順調に受け入れが決まり、早急に病院へ向かう。とりあえず着いたら茶戸に連絡を取って、現状を伝えよう。宇咲の方に進展があったかも確認したい。


「5分程度で病院に着きます。このまま手術を行うことになるかと思いますので、話だけ聞いてください。保護者の方には先生からもご連絡いただいて、今の状態をお伝えください。その後は、手術の終了を待つ、といった流れになってくるかと思います。詳しくは医師に確認を。……こちらとの話は、それからにしましょう。」

「はい、問題ありません。ただ、ちょっとこちらもごたついてて、少し抜ける時間があるかもしれません。なので、先に名刺だけ渡しておきます。もし何かあったらこちらへ連絡を。」

「まだ問題があるんですか……。」

「ちょっと別の生徒が拉致られてて……。」

「らっ!?け、警察案件じゃないですか!110番しますよ!」

「もう!手立てはあるので!大丈夫です。」


隊員と、でも、いやいや、と問答を繰り返していると、病院に着いたと声をかけられた。

聞いていた通り、すぐに手術室へと運ばれていく駿弥を見送る。隊員から事情を聞いていたらしい医師の呆れた表情に、俺は思わず目をそらした。もちろん、この医師は茶戸の絡んだ件だということを知っている、茶戸の息がかかった人だ。呆れた表情も、しっかり守れという叱責として、甘んじて受け入れよう。


「では、後はお願いします。」

「はい。ありがとうございます。で、センセー。とりあえず説明しますんで。どうぞ座って。」


医師が促すまま腰を下ろし、手術についての説明を聞く。一刻を争う状態だ、保護者が来た時にスムーズに話ができるよう、ちゃんと聞いておかなければ。

説明が終わり、医師が一息ついた。そして、一気に体勢を崩し俺を睨むと、説教タイムの始まりだ。


「龍司よぉ、しっかりしろよ。」

「……うす。すんません、土田さん。」


御年60を超す顔なじみの医師に、俺は軽く頭を下げる。

俺が瑛兄たちとつるみ始めたころに外科医としてこの病院での勤務が始まった土田さんは、親だか親戚だかが茶戸と関わりがあったとかで、ずっと茶戸関連の対応をしてきていた。もちろん、俺も世話になったことは数え切れないほどある。頭の上がらない人物というわけだ。


「若様から話は聞いてたがな。お前んとこの学生だろ。」

「そうっすけど。ちょっと今色々追いついてなくて、大変なんすよ。」

「だとしてもお前、銃って……。足吹っ飛んでててもおかしくないんだぞ。どうなってんだ。」


土田さんの意見に同意を示し、俺は頭を抱えた。

本当にどうなってんだろうな。ガキ相手に銃ぶっ放すバカがいるせいで、こうして後始末に追われるなんて。


「まぁ、あの手の怪我は慣れてるからな。可能な限りのことはしてくるから、あんま心配すんな。」

「頼んます。親にはうまいこと話すんで。」


後のことは任せ、俺は各所に連絡を入れていく。宇咲のこと、駿弥のこと、茶戸のこと。問題は山積み、時間もない。


「宇咲は……まだ続報はないか。駿弥の保護者……。んん……。どう説明をしたものか。」


駿弥の保護者の連絡先を表示した画面を前に、数秒悩み、発信する。こういうのは勢いだ。


「もしもし、駿弥さんの担任の畑本です。」

次話から貴斗視点が始まります

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