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緊急事態

畑本視点です

宇咲たちは無事に帰れたんだろうか。

部活に勤しむ生徒たちを見ながら、俺の意識は完全に外を向いていた。

ここ最近の相手の集団の選ばなさは、度を越している。住宅街で普通にドンパチしようとするわ、駿弥相手に10人単位で襲撃するわで、駿弥がもうついていけなくなっている。気力と根性でなんとかやれているだけの状態だ。

俺も可能な限り瑛兄に頼まれている護衛の役をこなしたいと思っているが、俺は高校の教師。通常の教師としての業務がある以上、つけない日も多い。今日も、顧問をしている部活動の練習日で指導に入る必要があったから、駿弥に任せて先に帰したが……。

俺がそんなことを考えながらソワソワしていると、校門の外から破裂音が響いた。


「……なんか割れたみたいな音した?」

「ねー、何だろう。」


生徒や他の教員がざわざわと話している中で、俺は最悪の事態が頭に浮かんだ。

銃の発砲音。しかも近い。心当たりが多すぎる。宇咲たちが撃たれたかもしれねぇ。てか、ここも危ねぇ!


「全員屋内に退避しろ!銃の発砲音だ!」

「えっ、うそ……。」「マジ?」

「頭を伏せろ!身をかがめて落ち着いて行動!」


一気にパニックになった生徒たちに指示を出しながら、次は近くの教員へこの場の誘導を頼む。俺はすぐにでもあいつらのところへ向かわないといけない。


「畑本先生!銃っていうのは……。」

「ここ最近、いわゆるヤクザの奴等の間でいざこざが起こっていると聞いています。本校は茶戸と縁がある。3年の貴斗が茶戸の人間ってのは周知の事実です。茶戸が関わってるのかは不明ですが、可能性としては、狙われる理由は十分にある。これでまったくの無関係、銃声でもなかったときは、俺が早とちりしたってことで校長に話します。俺は周囲の警戒に行きます。」


言うが早いが、俺は困惑する場を置き去りに駆け出した。

音が聞こえたのは校門の向こう、少し距離があっても遠いと言うほどではなさそうに聞こえた。もしターゲットが宇咲たちだったとして、まず対峙するのは駿弥だろう。なら、今撃たれたとしたら駿弥か?あいつ、大丈夫だろうな。

色々と考えながら足を進めていくと、2度目の銃声が聞こえた。次はさっきより近い。

音の聞こえた方へ方向を変え、さらに加速する。1回目の銃声から間が空いて、距離感もぐっと変わったということは、あいつらが離散して誰か1人が追われてのことかもしれない。早く加勢して安全を確保しなければ。

そう考えていた俺は、道の先に見えた光景に目を見開いた。野郎が大勢集まる中に、見慣れた制服。宇咲が縛られて車の中に乱雑に放り込まれているのが見えた。


「宇咲っ!待て……っ!」


慌てて近づくも、車は宇咲を乗せたまま発進した。


「くそっ……。」


ナンバーも離れてて見えなかった。黒のバンってことしか分からない。あいつらがどこの誰かも検討がつかない以上、行き先も絞り込めない。


「……駿弥……、水輿は……。」


焦りで回らない頭に、見えなかった2人の顔が浮かぶ。宇咲と一緒に連れ去られた?それとも2人は逃げ切れたのか?それも確認しなければ。

俺は携帯を取り出し、2人の番号を呼び出した。駿弥は繋がらなかったが、水輿はすぐに繋がった。


『せ、せんぜぇ!だずげでぇ……。。』

「み、水輿?どうした、今どういう状況だ!」

『しゅ、駿弥ぐっ……駿弥くんがぁ……、ゔっ撃た、れてぇ……、足ぃ……。』

「撃たれた……?分かった。水輿、お前は今どうしてる?安全か?」


泣きながら水輿が伝えてくれた内容に内心動揺したが、努めて平静を装い、水輿と話を進めていく。

水輿は今パニック状態。俺も一緒にパニックになってどうする。少しでも早く、全員の安全を確保できるように頭と身体を動かせ。


『それで、わた、しは……今隠れてる……。コンビニの横、路地……。』

「そうか。怖かったな、よく頑張った。コンビニの横にいるならいい。周りをよく見て、安全ならコンビニに入れ。入ったら、茶戸の組員と湧洞に位置情報を送ってほしい。湧洞には俺から話しておく。できたら店員に保護を頼め。ストーカーに追われたって言えばいい。店内にいさせてほしいと言うんだ。できるか?」

『う、うん。コンビニ入って、景介さんと茶戸の誰かに居場所言う。お店の人にいさせてって言う。』

「上出来だ。俺は駿弥の様子を確認してくる。何かあったらすぐ連絡しろ。いいな。」

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