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珍しい連絡

貴斗視点です

少し前から、標的が初音や舞菜ちゃんから駿弥に変わった。と同時に、襲撃の目的も拉致から排除になったように思う。駿弥の度重なる怪我がその証拠だ。

以前はある程度の人数でも問題なく駿弥1人で対処できていたものが、今では2人組の対処も難しくなってきている。駿弥が大きな怪我をした件も、実行犯自体は3人だった。今はりゅーちゃんにも、極力初音たちについて駿弥のフォローをするよう頼んでいる。


「たかだか3人程度にやられるような鍛え方はしてない。連日の相手での疲労を加味しても、今までと相手のレベルが変わってないんなら、そこまで大きな怪我をするはずがない。……俺は駿弥をそんなヤワに育ててない。奴等がこちらの許容できるレベル以上の手駒を引っ張ってきたってことか。」


さてこれからどうするか、と俺が頭を悩ませていると、胸元から場違いに軽快な音がしてきた。珍しい、プライベートの方に着信だ。


「もしもし、貴斗だよ。どうしたの、初音。」

『あっ、貴斗さん!あの、今時間大丈夫ですか?』

「うん、もちろん。珍しいね、初音が電話かけてくるなんて。」


相手は初音だった。今まで俺がこちらに来てから初音がかけてきたことはなかった。それは出立時に俺から、連絡できる暇がないと言ってあったのもあると思う。律儀に俺から連絡があるのを待つと言っていたのを守っていたんだろう。健気でいじらしい初音まじ天使。

だけど、それなのにこうして連絡してきたということは、何かあったんだろうか。


『あ、その……、全然重要な用があるとかじゃなくて……。ちょっと私が不安になっちゃったから声聞きたくなっただけなんです。ごめんなさい、貴斗さん忙しいのにお邪魔しちゃいましたよね。』

「気にしなくてもいいのに。連日怖い思いしてるんだもんね。今日も襲撃があったって聞いてるよ。怪我してない?」

『はい。今日は部屋にいるときにお屋敷の外で起こったことなので。でも、駿弥くんだけじゃなくて先生も襲われそうになったって聞いて、落ち着かなくなっちゃって。』


そりゃそうだ、と思いながら初音の話を聞いていく。

俺にとっての日常と、初音たちにとっての日常は違う。周囲の人が危険にさらされたと聞けば、次は我が身と思って怖気が走るのも当然だし、その不安を誰かに共有して軽くしたいと思うのも、まぁ普通のことだろう。

初音の話を聞き、たまに俺の話をして、穏やかな時間を過ごす。初音が不安を和らげる先として俺を選んでくれたんなら、全力でその信頼に応えなければ。


『なんだか、ちょっと落ち着いてきました。貴斗さんの声を聞けたからですね。ありがとうございます。』

「んーん。こんなことでいいならいつでも。初音の憂いを払うのは俺の役目だからね。気にしないで。」

『でも、忙しい貴斗さんの時間をとっちゃうのは気が進まないので……。その、もし問題がないならでいいんですけど、これからはもうちょっとだけ、連絡してもいいですか?その、時間があるときに10分とか、5分でいいんですけど。』


初音からの申し出に、考えるより先に口から返事が飛び出ていた。もちろん悩む必要すらなくOKだ。


「いつでも連絡して。絶対出るよ。出れなくても、、絶対すぐかけ直す。大した用がなくてもいい。暇だなって時にかけてきても、全然大歓迎だからね。」

『はい。いっぱい連絡しちゃうかもしれないですけど、貴斗さんの都合のいい時に連絡してくれたら嬉しいです。』


初音と話すのも久しぶりだし、こうして事情聴取でない会話をするのもいつぶりだろう。初音の優しくて嬉しそうな声に、俺は心が浄化されたように穏やかな気持ちで通話を切った。

あちらの状況は少しずつ悪くなっている。考えたくはないけど、駿弥もりゅーちゃんも動けなくなった時、残った組員がどれだけいるか。初音と舞菜ちゃんをまとめて守れる今の体制を維持できなくなる前に、次の対策を講じなければ。

ここ最近は、抗争の策と並んでそんなことを四六時中考えていたため、気分的にも疲れていた。その中での初音からの連絡は、清涼剤とも言えるほど。気分転換にもなった。

俺、これでまだまだ頑張れる。俺はまだ折れるわけにはいかない。


「俺はまだ初音のヒーローでいられる、大丈夫。」

次話から初音視点が始まります

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