情報精査
貴斗視点です
「これで今週3回目……。増えてきたね。」
「えぇ。先日は駿弥が腕に負傷するといった件もありました。そろそろ対策を強化する必要があるかと思います。」
「うん。駿弥の親にはどう説明をしたか聞いた?」
「駿弥からは、偶然居合わせた喧嘩の仲裁で負ったものだと説明したと聞いています。まぁ、ヤクザの抗争に首突っ込んで怪我した、よりはよほど納得できますし、妥当なところかと思います。」
先ほど入ってきた情報に、俺と景介は頭を抱えて悩んでいた。
抗争が始まったら、事務所のある場所でも動きがあるのは覚悟していた。襲撃もあるだろうと予想していたし、そのためにりゅーちゃんと駿弥に対処を依頼している。その中で多少のけがや被害は織り込み済み。そう思っていたけど……。
やっぱり、実際に駿弥が怪我をしたと聞けば、その覚悟が揺らぐのが分かる。友人と慕ってくれてる後輩を危険な目に遭わせてまで護衛なんてやらせるべきじゃない。どうにか手を回せば、組の人間だけで対応できるんじゃないかと、暇さえあれば考えるようになった。
無論、駿弥のやる気は知ってるし、無下にするつもりはないけど。
「若、駿弥から報告が届きました。」
「ん。……今日は3人がかりでねぇ。りゅーちゃんがうまいこと対応してくれたみたいだね。大きい怪我はないみたいだ。」
「はい。……顔写真がついてますね。所持品は……、若、この墨は確か、酉宮の構成員が好んで入れているものでしたよね。」
「うん、そうだね。てことは、今回は酉が絡んでるってことか。ハハッ、我が茶戸家は敵が多くて困っちゃうね。」
駿弥から送られてきた報告を確認して、景介と意見交換をしながら各所への連絡をしていく。駿弥に聞きたいことは山のようにある。情報は鮮度が命。記憶から消える前に、新鮮な内にできるだけ多くのことを聞いておきたい。そのためには、報告を読みながら整理していかないと、とてもではないけど追いつかない。
「孝汰に連絡して。明日の夜までに襲撃者全員分の携帯の中身精査して送るようにって。100%の出来は期待しないし、なんなら俺と景介が見れるようにしといてくれればいいし。」
「伝えておきます。……若、これを。」
「……所持品に写真……盗撮だね。初音と駿弥と……舞菜ちゃん。りゅーちゃんのは……ある。あ、孝汰と美南、母さんまである。へぇ、よく集めたね。……まぁ、写りも悪いしなんとも言えないけど。」
「複製品でしょうか。」
「まぁ、可能性は高いよね。少なくとも、1枚撮られてるんだもん。コピー作って共有した方が効率的だよね。」
問題はどこまで共有されてるか。江徒内のみなのか。茶戸に敵対する組織はどうか。さらに言えば、警察にまで流れてしまうと、何の落ち度もない初音たちが、俺たち裏世界の関係者としてマークされかねない。可能な限り早急に、全体的に回収し、流出を食い止めなければ。
所持品や身体的特徴など、送られてくる情報を元に指示を出していく。どこの差し金かくらいは今日中に特定しておきたいところだ。
「とりあえずこんなもんか。他はある?」
「私も、ひとまず続報を待とうと思います。後は……期待はせずに一応舞菜に様子を聞いておきます。」
「ん。連日物騒だし、気をつけるよう言ってあげてね。」
仕方なさそうに、でもそそくさと携帯片手に退出する景介を尻目に、俺は再び報告書を見つめた。




