次の一手
景介視点です
「初音にけががなくてほんとによかったよ。」
「えぇ。まだどこからということは不明ですが、事務所に残った組員だけで取り調べを行うように指示を出しましたので、近日中に情報が上がってくるかと思います。」
揃ってパソコンやスマホの画面に齧りついていた目を上げ、若と2人で安堵のため息をついた。
駿弥から入った襲撃の報。お嬢と舞菜が狙われたと聞いて、正直生きた心地がしなかった。お嬢のことはもちろん、舞菜に何かあったらと考えただけで、めまいがしそうなほど頭が真っ白になった。
無論、今後の取り調べで関係各所にはきっちりとお礼参りをする所存だし、そうでなくても今後茶戸家の関係者に手出しをしようなどと考える輩が出ないように引き締めを行っていく予定だ。
だがそれはそれとして、舞菜に手を出した奴には、個人的に報復をしたいところ。久々に血の気が引いた思いをしたのだ。そのくらいは当然のことと覚悟してほしい。
……話が脱線した。とにかく、今回のことは茶戸家への明確な挑戦……いや、挑発行為だ。全力を上げて対応しなければ。
「……さて。そろそろ俺たちも仕事に戻らないと。景介、あちらさんの反応は?」
「はい。先日からの衝突で、物資に多大な損失を与えることに成功しましたので、補給ルートを注視しておりましたら、西方面から動きがありました。少し昔の話にはなりますが、午法とかつて協力関係にあった関西の組からと見られる援助を確認しています。」
「あー、西の方か。確か、そこの組長が午法の分家筋出身だったね。最近は接触もないと思ってたけど、さすがに古巣の本家は無視できなかったか。分かった。じゃあ、そっちは地元の人に頑張ってもらおっかな。景介、向こうにも使える手足がいるんでしょ?その人たちに手伝ってもらおーよ。1週間あげるから、証拠あげてもらって。」
「承知しました。すぐに指示を出します。」
若からの指示を受け、頭の中で人選を行う。今回の調査対象は今相手をしている奴等ではない。だから、今すぐ叩きのめす必要性は低い。出すべき指示としては、今後叩きのめすことができるだけの下準備を、1週間以内に整えることだ。
連絡する内容を決め、改めて若に向き直る。まだ確認しておくべきことは残っている。
「運び込まれた物資ですが、拠点まで山側のルートを通ってきた可能性が高そうです。ただし、数回長時間停車の後、若干デザインの異なって見えるトラックが発車しているのを、付近の監視カメラ及び防犯カメラで確認されています。そのデータはこちらに。」
「つまり複数人が関与しているってことか。どこの誰かは?」
「監視カメラ等の設置数が足りない箇所があり、足取りからは追えませんでした。ただ、数台ナンバーを確認できたものがあるので、そちらから探ってみます。」
「分かった。特定できたら景介の方で対応決めていいよ。詳細も、一通り終わったら全部聞くし、軽くで大丈夫。」
「承知しました。」
若に対応を全任された。これは、若から俺への信頼の証だ。全力でそれに応えなければ。若の右腕という地位にかけて。




