急な展開
初音視点です
「しゅ、駿弥くん!」
「あ、ご、ごめん急に押しちゃって。2人とも怪我してない?」
「う、うん……。その人は……。」
「あー……その、危ない人?ちょっと待ってて。すぐ人呼ぶね。」
駿弥くんはそう言うと、手慣れたように足で両手を押さえつけ、電話をかけ始めた。
「もしもし、土井さんすか。駿弥です。はい、待たれてました。全員無事です。男1人。捕らえてます。」
細々と状況を伝え、次は畑本先生に電話して同じように状況を伝えると、駿弥くんは自分のベルトで相手の両手を縛って一息ついた。流れるような作業に、私も舞菜ちゃんもつい、おー、と拍手した。
駿弥くんが貴斗さんや会長、先生に色々と教えてもらってるのは知ってたけど、こんなにも頼もしい。
すぐ近くで起こったからか、電話して数十秒も経たないうちに事務所から人がたくさん出てきた。
「お嬢!大丈夫っすか。」
「はい。駿弥くんのおかげで、私も舞菜ちゃんもなんともありません。ね、舞菜ちゃん。」
「うん!びっくりはしたけどね。」
「そりゃよかった。駿弥、お前も大丈夫か。」
駿弥くんが捕まえてた人を事務所に連れてったり、それぞれ周囲を見たりと、みんな忙しなく動いている。私たちも邪魔にならないように隅の方で大人しく待つことにする。
「驚いたね。急に駿弥くんに押されて。」
「本当だね。……あの人、やっぱり私たちを狙ってたのかな。」
急にドタバタと展開が進んで、よく分からないうちに終わっちゃったけど、あの人ナイフ持ってた。こうして一息つくと、なんだか怖くなってきた。
駿弥くんがいち早く気づいて対処してくれたけど、一歩間違えてたら刺されてたかもしれない。そう考えると、背筋がゾクリと粟立つ気がした。
「お待たせ。中入ろっか。」
「うん。駿弥くんは怪我とかしてない?」
「俺は大丈夫。ていうか、ごめん。思いっきり押したし、膝とか打ってない?転んでたでしょ。」
「うん、大丈夫。ね、初音ちゃん。」
「そうだよ。全然大丈夫。」
舞菜ちゃんと2人で頷くと、安心したように駿弥くんは眉を下げた。




