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本格始動の前に

貴斗視点です

ついに明日は一度目の衝突を起こす日だ。近隣住民にも通達は出し終え、避難も促した。準備は万全だ。


「景介、親父のとこ行こうか。」

「はい。」

「ようやくここまで来たね。こっち来てから……3週間くらいか。……3週間も初音に会えてない。由々しき事態じゃない?速攻で終わらせようね。」

「もちろんです。必ずや憂いなき状態で帰りましょう。」


景介と一緒に親父の元へ行くと、準備を終えた部屋の中で、だらけた格好の親父が待っていた。


「……息子に仕事押し付けて、自分は酒を片手に転がってるなんて……。いいご身分だね、親父。羨ましい限りだよ。」

「おぅ、来たか貴斗。早く座れ、やるぞ。」


盃を持ち、隣の空席を叩く親父に、肩を竦めながら席に着く。

開戦前の決起集会のようなこの宴会では、参加する組員全員でお神酒を盃で飲み交わすのだ。俺達が最後だったようだから、宴会好きというか、ただの呑んだくれの親父は待ちくたびれていたのだろう。

盃を手に持ち、全員が親父に注目する。みんなの視線を集める親父は、口上を述べ始めた。


「全員酒は渡ってるな。……ついに明日は開戦だ。今日までの準備ご苦労だった。俺ら茶戸の力は未だ健在だと内外に示し、この世界に蔓延る悪意の抑止力となれるよう努めてほしい。」


全員で親父の言葉に頷き、手にしていた盃を掲げた。


「今の俺らには勝利が約束されてるも同然だ。お前らのバックには俺がついてる、安心して奴等に身の程を知らしめてやれ。」


全員が静かに一礼し、盃の中身を一気に飲み干す。

ツンとした酒の匂いと一瞬カッと喉を過ぎた熱いような苦みを耐え、一息をつく。


「うぇ……何回やっても慣れないね、これ。」

「はっ。クソガキにゃ酒の味は早かったってこったな。」

「まぁ、俺は未成年だしね。文字通り酒の味は早いんだけど。」


とりあえずこれで開戦前の儀式は終わったわけだ。あとは準備してきたことを計画通りに進め、奴等に目にもの見せてやるだけだ。

盃を回収に来た組員に礼を言って、そのまま宴会に突入する。

最後の夜は参加する全員で食事兼会議で最終調整を行うことになる。


「すでに相手方への通達は済んでいます。今のところ相手方から返答などのリアクションはありません。」

「あっちの動きに変化は?」

「通達を行った日の夕方より、本拠地である事務所、周辺の関連施設や同盟組織間への人員の出入りが増しています。また、当初からあちらのパソコンなどに仕掛けた遠隔操作用アプリから、各所への連絡が急増しているのを確認済みです。内容としては、人員や物資の援助要請や、情報提供が主だったものになっています。」


今までにも各班から報告は受けているが、頭の中を整理するためにも改めて状況を聞いていく。

概ね事前に推測していた通りに事は運んでいる。あちらの動きも、想定内の範囲から出ないし、大きなトラブルもない。計画の通り順調ではある。

ただし、今回に限っては1つ、考慮すべき事案がある。

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