帰ってきた会長
初音視点です
「会長、向こうの様子はどんな感じですか?」
今日の夕方に慌ただしく帰ってきた会長を捕まえて、私は貴斗さんのことをあれこれと聞いていた。まだ危ないことは始まってないから、忙しくはしているけど無事、という言葉を聞いて、ついホッと息をつく。
今日は舞菜ちゃんも駿弥くんも来ていて、お泊り会だと準備をしていた。
「ねぇ景介さん!今日はここに泊まってくんですよね?みーんなで一緒にお泊り会しましょうよ。」
「……なぜ姐さんは貴女の宿泊許可を出したんでしょう。いやむしろ、貴女、ご両親になんと言って来たんです?昨日の今日で。」
「へへ。正直に言って来ましたよ!彼氏の家に泊まりに行くって。」
誇らしげに胸を張る舞菜ちゃんに、会長は愕然と目を見開いて絶句している。私も同じように驚きを隠せない。
勇気あるなぁ、舞菜ちゃん……。私だったら、人に彼氏の家に泊まりに行くなんて、恥ずかしくて言えない。家族ならなおさらだ。
「あ、貴女のご両親は、それで納得したんですか!?」
「んー、パパはすごく落ち込んでましたけど、ママは喜んでましたよ。もー、あれこれ聞いてくるから、疲れちゃいました。」
「……貴女の父君に深く同情します。まぁ、許可が出てる……?のであれば、問題ありませんね。どうぞ、広い客間を整えるので、使ってください。」
「え、景介さんはどうするんですか?」
「私は仕事です。仕事をしに戻ってきたんですから、当然でしょう。」
「えぇ!?せっかく景介さんとお泊り会で夜通し話そうと思ってたのに。」
会長が冷たくあしらうと、舞菜ちゃんも不服を顕に文句を言い始めた。
たしかに、久しぶりに会ったのに仕事で話せないって、寂しいかも……。でも、会長も貴斗さんと同じように大事なお仕事だもんね。
「お待たせ……って、どうしたんだ?」
2人が一歩も譲らないまま話し続けていると、お風呂に入っていた駿弥くんが戻ってきた。会長と舞菜ちゃんの剣呑とした雰囲気に、戸惑いながら室内に入ってくる。
「駿弥くん!景介さんがひどいの!」
「ひどいのは貴女の頭です。駿弥、せっかくの機会だ。情報共有といこう。」
「え、あ……。いいのか?水輿さん。」
「後で相手する。お嬢、申し訳ありませんが、しばらく舞菜の相手をしていただいてもよろしいでしょうか。駿弥と打ち合わせをし終えたら、戻ってまいりますので。」
「はい、大丈夫ですよ。」
会長からの頼みごとに、私はもちろん頷いた。舞菜ちゃんとおしゃべりしてるのは楽しいし、私も望むところだ。この後会長も舞菜ちゃんと過ごす時間を考えているみたいだし、それまでの時間つぶしくらい問題ない。




