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文化祭の準備

初音視点です

「初音ちゃん!道具と材料、持ってきたよ。」

「舞菜ちゃん、ありがとう。じゃあ、内装頼んでもいい?」


学校では、今週から文化祭の準備期間が始まった。私たちのクラスでも、最後の追い上げとばかりに準備に精を出していた。私は委員として采配を執りながら、みんなの様子に頬を緩めた。

クラスメイトである舞菜ちゃんが快く内装を引き受けてくれたことにお礼を言い、私は倉庫へと向かった。学校貸し出しの機器類を受け取りに行かなくては。

飲食系をやるクラスには、コンロや水タンクなどが貸し出される。それの受取日が今日なのだ。


「すいません、1-Bの宇咲です。調理器具の受け取りに来ました。」

「はーい。台車使って。段ボールにクラス名書いてあるでしょ?それ持ってって。」

「はい、ありがとうございます。お借りします。」


台車に道具を乗せ、クラスまで押し進んでいく。腕にくるズシリとした重さに、少し足取りも重くなってしまう。誰か手伝ってもらえばよかった。


「あ、初音?」


ふと、横から声をかけられた。その声につられてそちらを向くと、茶戸先輩がこちらを見てニコリと笑っている。

先輩に会うのはあの日以来、少し緊張してしまう。どうにか不自然にならないように手を握り締めた。


「お、お久しぶりです、先輩。」

「久しぶりー。重そうなの持ってるね。それ、クラスに?」

「そうです。先輩も何か受け取りですか?」

「そ。まぁ、忙しい景介のパシリになってあげてるだけなんだけどね。……うん。重そうだし、ちょっと待ってて。」

「へ?あ、ちょ、先輩?」


そう言い残した先輩は、倉庫の方へと走っていってしまった。待っててと言われたけれど、私に何か用でもあるのだろうか。言われた通りその場で待っていると、片手に何か箱を持った先輩が戻ってきた。そして、交換だと言って私の持っていた台車と箱を取り替えてしまった。


「あ、先輩!大丈夫ですよ、先輩に重いもの持たせるわけにはいきませんし!」

「いいからいいから。初音、行こう。……って、これほんと重いね。」

「だから先輩にお任せするわけには」


慌てて軽い箱を抱えて着いていく私の言葉にはお構いなしにズンズンと進んでいく先輩は、笑みを深めた。


「俺は女の子にこんな重いもの持たせたまま隣に平気でいられるほど、男のプライドないわけじゃないよ。初音も、こーいうのは男に華持たせて。」

「う……。あ、えと……あ、ありがとうござい、ます?」

「うん、それでいい。」


私が釈然としないままでもお礼を言うと、先輩は満足そうに頷いた。そして、歩調を私に合わせ、話を始めた。


「初音のとこは喫茶店だっけ。準備はどう?」

「もうほとんど終わってますよ。これ設置したら終わりくらいです。」

「へぇ、早いね。」

「みんなすごく協力してくれたので。先輩のクラスは……脱出ゲームでしたっけ。楽しそうで、気になってたんです。どうですか?」

「俺のとこももうすぐじゃないかな。俺は問題作成だったから装飾の詳しいことは分かんないけど。」

「先輩が問題作ったんですか!」


先輩のクラスは前からずっとやってみたいと思っていたところだけど、先輩が作ったという問題なら、やってみたい。あの会長がべた褒めする先輩が作ったのだ、クオリティーだって高いはずだ。きっとすごい問題だ。

私は目を輝かせて先輩を見た。


「うん、まぁね。景介も一緒に考えたし、めちゃくちゃ難しいのできたよ。」

「会長と……。それはすごそうです。難しそうなのは想像つきます。」


先輩だけでもそのレベルは推して知るべしだ。そこに学校一の秀才である会長まで加われば、どんなものができるか。ますます気になる。

先輩の話に、私は余程表情に出ていたようだ。先輩のクスクスという笑い声に、先輩へと意識が戻ってきた。恥ずかしい、私の顔も、きっと赤くなっているだろう。すごく熱い。


「す、すいません……。私ったらつい……。」

「いや、嬉しいよ。初音がそこまで俺のクラスの出し物楽しみにしてくれてるなんてね。顔真っ赤しちゃって、かわいいなぁ。そんなに気になるなら、俺が案内しようか?」

「え?先輩が?」


先輩からの申し出に私はキョトンとした。

先輩が、案内してくれるの?

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