嬉しい知らせ
舞菜視点です
「え、本当ですか!?」
『……必要な資料を取りに戻るだけですよ。真っ昼間に戻って誰かに会っても面倒なので、そちらには夜に着くよう出るつもりですし。』
「それでもですよぉ!明日ですよね。茶戸センパイのお家ですか?行こっかな。ちょっとでも会えたら嬉しいです。」
夕飯も食べ終わり部屋でリラックスしていた私は、ここ最近の日課である電話連絡を今日も行っていた。
センパイと遠くへ行ってから、景介さんは意外にも私からの連絡に応えてくれるようになった。もちろんすぐに出れないときもあるけど、その時には必ず、いつ頃連絡ができるかメッセージをくれる。
今日も一度昼休みの時間にした電話の折り返しで、景介さんの方からかけてくれた。それがこの電話だ。
さらに嬉しいことに、景介さんが明日一度こっちへ戻ってくるらしい。夜中にて言ってるけど、戻って来るなら会えるかもしれないってことだ。明日は火曜日で、明後日も普通に学校だけど、センパイの家に行ってみようかな。
『まったく……。事務所に来るのは自由ですが、身の安全には十分気をつけてくださいよ。貴女は私の、恋人なんですから。』
「分かってます!へへ。明日は初音ちゃんと一緒に、センパイの家に行って、誰かに送ってもらいます。これでいいですよね?」
『まぁ、及第点でしょう。外出する際は、必ず駿弥か茶戸の関係者をそばに置いてください。……それはそうと、中間テストはどうですか?』
景介さんからの言葉に、私は思わずうめき声をあげた。
来週、中間テストがある。もちろん、勉強しないといけないけど、どうしても英語と数学と物理が分からない。私は、理系科目と英語が苦手だって、景介さんも知ってるからこその確認なんだろう。
私の声に、景介さんは私の勉強の進度が芳しくないのを察したのか、軽いため息をついて、声をかけてきた。
『舞菜、ビデオ通話にできますか。』
「へ?あ、はい。大丈夫です。」
『じゃあ、ビデオ通話にして、教科書の分からないところを一通り映してください。私が特別に1時間、教えてあげますから。』
「え、ほんとですか?……あ、だめです!景介さん忙しいんだから、時間取っちゃだめです!」
景介さんの提案に、私は一瞬喜んだが、すぐ思い直して首を振った。
景介さんと茶戸センパイが、ブラック企業並みに仕事をしてるのは初音ちゃんや駿弥くんに聞いてた。勉強してるよりも仕事してる方が多くて、時には睡眠時間も削っていたらしい。
景介さんは言わないけど、今だって本当はすごく忙しいんだと思う。じゃなきゃ、受験前のこの時期に、学校にすら来れないなんて、ないと思う。
なのに、私の勉強のためにさらに睡眠時間を削らせるわけにはいかないよ。




