本当に問題はない?
景介視点です
「こんなところでいかがでしょうか、若。」
「うーん……。や、いいんだよ?いいんだけどねぇ……。なーんか、この空白、気になるよねぇ。ここだけ、奴等の影響下にある店舗がない。この地区は奴等の本拠地だから、こんな空白を残すとは考えられないんだけど。これ、ほんとに近くに何もない?景介、すぐ出る?」
「……はい。こちらです。事前調査では、よくあるシャッター街で、不審な点はなかったと報告がありましたが……。」
俺の説明にも、若は難しい顔で唸っている。
何が気にかかっているのか。俺も若の指摘した箇所を中心に地図を覗き込み、思考を巡らせた。
位置関係としては、相手の拠点の南西。俺達のいるここと相手の拠点とを線上で結ぶと、ちょうど三角形になるような位置だ。周囲を住宅街に囲まれた商店街で、ぱっと見たところだと、特に問題のあるようには見えない。
つまり、若が引っかかっているところは、表面的なものではないということ。そういえば、この商店街にある建物内の店舗は、どんなものがあっただろうか。
「……この事前調査、建物内はどの程度調査をしたか分かりますか。」
「少々お待ち下さい。健司!健司いるか?確認したいことがある。来てくれ。」
「何だ良一。……おっと若。若からのご質問で?」
「いえ、私からです。事前調査の件ですが。この地区。建物内の調査はどの程度行いました?」
俺の質問に、呼ばれた組員は真面目な顔で答えた。
「このエリアは……、ご報告した通りシャッター街でしたので、中まで入れなかったところも数か所あり、入れた建物のみ内部調査を行いました。場所は今共有します。ただ、入れなかったところについても、出入りのできそうなドアなどに動かした形跡がなかったのは確認しています。」
「そうですか。」
「……ここは?」
報告を静かに聞いていた若が、地図上の一点を指さして聞いた。
そこを見てみると、今まで見ていたシャッター街より南に少し離れた雑居ビルだ。入ってるテナントも、ありふれたものに思える。強いて気になる点をあげるとしたら、周囲の店はあらかた閉店しており、この雑居ビルしか開いているところがないことくらいか。
「そこは……えぇと……。あった。ここは営業してる店がいくつか入っていましたので、全室確認するのは無理でしたが、見た限りは怪しいところはなかったと聞いています。担当した奴を呼んできましょうか、若。」
「んー、そいつが書いた調査書はある?」
「送ります。」
若と俺に送信された調査書を読む。
雑居ビルは4階建て。各階3〜4室あって、そのうち7室が埋まっている。他の部屋はすべて中まで見てあるが、どこも不審な点はない。テナントが入ってる部屋は見れていないから、その中に何か怪しいところはないか。
「……あ。」




