心配させないように
初音視点です
貴斗さんがまた長い間どこかへ行ってしまうらしい。
今日久しぶりに貴斗さんと学校に来れたと思えば、畑本先生と駿弥くんを集めてそんな話をしていた。
「出発は来月の12日。今回はちょっと長くなる予定だよ。帰りの目処が立ってないんだ。」
「……最終決着になるってことか?」
「だといいねってとこ。まぁ、大一番になるのは間違いないだろうけど。そこで2人にはこっちの守りの中心になってほしいって相談。これまでと一緒で、初音と舞菜ちゃんに付いてくれればいいんだけど、やっぱ前回より人数をこっちに割けないから。」
真剣な表情で話し合ってる3人に、私も少し緊張してしまう。
また、貴斗さんが遠くに行っちゃう。分かってたことだけど、やっぱり怖い。貴斗さんはそばに居てくれるだけで安心できる。逆に、離れてしまうだけですごく不安になる。
でも、貴斗さんは私や周りが怖い目に遭わないように、不安にならないように色んな手を打ってくれてる。遠く離れることになっても、できることをしようとしてくれてる。だから私も、貴斗さんに心配をかけないようにしっかりしないと。
「じゃ、そういう感じで。詳しい話は、また家でしよう。その時は連絡するから、よろしくね。」
「あぁ。……瑛兄たちによろしく言っといてくれ。」
「りょーかぁい。帰ろっか、初音。」
「はい。先生さようなら。駿弥くんもまた明日ね。」
貴斗さんと2人で並んで歩く。こうして帰るのはすごく久しぶりで、私はつい嬉しくて顔を緩ませた。
「どうしたの?初音。」
「こうして貴斗さんと帰るの久しぶりだから嬉しくて。」
「あぁ、そうだね。やっと学校に来れたから、俺も嬉しかったよ。明日も一緒に行けるからね。」
「ほんとですか?!やった、嬉しいです。」
明日も貴斗さんと1日一緒にいられる。
それだけで、私のテンションは急上昇する。最近は土日もずっとお仕事で一緒にいれないことが多かったから、1日一緒にいれるなんてすごくレアなことだ。
「この後長く空けちゃうから、今の内に学校行っとかないと取り返せなくなっちゃうんだ。ほんと、迷惑しちゃうよね。」
「そうなんですね。早く終わるといいですね……。」
「うん。俺も初音に会えないのは嫌だし、早く終わるように頑張ってくるね。」
貴斗さんの自信に溢れた顔を見て、私も笑みを浮かべて頷いた。
貴斗さんがそう言うなら、絶対早く終わる。なら私も、貴斗さんに心配かけないように待っていよう。




