デートのお誘い
景介視点です
「ぜぇったい絶対デートしてください!」
……まじでなんでこの子を選んでしまったのか、過去の俺。
目の前で駄々をこねるように叫ぶ俺のカノジョ……もとい水輿さんを見て、俺は深い深い、大きなため息をついた。
事あるごとに恋人らしいことをしたいと騒ぐ彼女を、俺は若干……いや、だいぶ持て余していた。嫌いではないが、ちょっと距離を置いときたいといったところ。
……交際が始まってからまだ2ヶ月といったところなのに、早くも倦怠期というやつだろうか。
「貴女ねぇ……。この忙しいときに……。」
「会長ずっとそう言って、連絡すらくれないじゃないですか。少しは彼女に優しくしてください!」
「……はぁ。じゃあその彼女様はどちらへ行かれたいんですか。」
強情な水輿さんに負け、俺は渋々ながらデートとやらに誘った。俺の態度にムッとしながらも、どこへ行こうか考え始めた水輿さんを放っといて、俺はこれからのスケジュールの調整を始めた。
正直、現状で悠長にデートしてる暇なんてあるわけがない。本来なら2学期真っ最中の今、学校にすら行けず仕事に明け暮れているのだから、時間が少しでもあれば仕事を終わらせなければいけない。
でも、若に大事にするように言われてるから。真面目に向き合えと言われてる。それに、この子は俺のことを肯定してくれた子。俺のこれまでを受け入れてくれた子。
逃がしちゃいけない存在だと、自分でも思った子だ。真面目に、大事に向き合わなければ。
「決めました!会長、テニス好きですか?」
「テニス……?好き、というかまぁ、嫌いではありません。」
「よかった!テニス場行きましょ。私、テニス好きなんです。」
意外とまともだった希望に、思わず胸を撫で下ろした。
よかった。遊園地とか水族館なんて定番スポットを言われても、楽しめない自信しかない。体を動かしていた方が、気も紛れるというものだ。
「分かりました。日だけは、こちらで決めてもいいですか?何分、仕事が詰まっているので、整理してからでないと。」
「もちろんです。あ、でも、なるべく早めにしてくださいね。」
じゃあ私はこれで、と帰っていく水輿さんを、俺は拍子抜けした気持ちで見送った。
……この話のために休日の朝っぱらから事務所に来たってのか?他に用はなかったのか。
「……ま、時間を取られないに越したことはないか。」




