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新しい絆

畑本視点です

湧洞が静かに言った言葉に、俺は言いたいことがうまく口にできず、言葉に詰まった。

茶戸が、俺を弟分にして、湧洞が見たことがないくらい喜んでたなんて。思いもしなかった。どうせパシリにできると面白半分に絡んできてるんだと思ってたから。


「……だから……。今のも俺が弟分だから庇ってくれたのか……?」

「あ?言ったろ、顔見せの説明で。自分の庇護下に入れるって宣言するもんだって。大事な弟分に宣言しといて、庇護まで約束したんだ。兄貴分として、それは最低限のルールだろ。」


こいつら、俺を弟分にするってそこまでの覚悟で言ってたのか……。

当然のように言い切った湧洞に、俺は胸がギュウと絞られたような気がした。


「お前ら、こうなることを見越してたのか?」

「あん?」

「お前ら、こうやって襲撃されんのよくあるんだろ?そしたら俺、完全に足手まといじゃねぇか。それなのに、ずっと俺に鍛えるっつってかまってくれてたんだろ?勝手に押しかけてきた俺を。」

「なんだ、急に。俺らはけっこー楽しんでたんだぜ。これくらいの雑事、お前が俺らとつるんでくれんなら、大した労力にもなりゃしねぇよ。……お、来たな。瑛史、遅ぇぞ。チンタラしてんじゃねぇ。」

「しゃーねーだろ!家までどんだけあると思ってんだ。龍司、待たせたな。帰ろーぜ。」


さっきあったことなどなんでもないように、さっさと俺の家への道を行こうとする2人に、俺は鼻の奥のツンとした痛みを誤魔化せず、鼻をすすった。


「……待ってくれ!」

「あん?」「お?」


悔しい。当然のように守る対象に見られてることが。

悔しい。実際に守られてるしかできなかった自分が。

でも。嬉しい。2人が俺を庇護下に置いてくれたことが。俺を弟分にしてくれたことが。俺のいる毎日を楽しんでくれてたことが。


「俺……俺を、舎弟にしてくれ!」

「……おぉ?急にどうした。今までお前、嫌がってただろ。」

「そーだぞ。何の心境の変化だ?」

「俺には、2人に本当の意味で追いつくことはできないと分かった。でも、俺は2人から離れたくねぇ。俺は2人の隣に……そばにいてぇ。舎弟でもパシリでも、2人の隣にいれんなら、何でもいい。」

「んん?いや、今と変わんねぇだろ。このままでもいいよ。」


茶戸がそう言い背を向けると、湧洞も同意して後に続いてく。俺は拒否されたことに驚き、慌てて言葉を繋げた。

それじゃ何も変わんない。こんな曖昧な状態じゃ、いやだ。


「俺は胸張って言える関係になりたいんだ!」

「……いや、舎弟は胸張って言えるもんじゃねぇだろ。」

「違う!俺の兄貴分は茶戸と湧洞だって。友達なんて曖昧なもんじゃねぇ絆が欲しいんだ!一生涯切れねえもんが!」

「あー……ん……。ほんと、お前は物好きな奴だな。分かった。お前がそうしたいなら正式に認めてやるよ。」


茶戸の一言に、俺は顔を茶戸の方へ向け目を瞬かせた。


「ほ、ほんとか、茶戸!」

「おー。つか、いつまでんな他人行儀な呼び方してんだよ。お前の兄貴分だぞ。好きに呼べ。」


茶戸の言葉に、本当に認めてもらえたことを実感できて、俺は震える声で新しい呼び方を口にした。


「あ、瑛兄、景太郎さん……。」

「……ん?俺と瑛史で距離感違くね?」

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