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兄貴気分

畑本視点です

緊張していた体の力を抜きボーっとしていると、湧洞が話しかけてきた。


「悪かったな、龍司。怖かっただろ。」

「え?」

「やー、俺らは悪くねぇから謝る必要なんてこれっぽっちもねぇけどな。でも、お前が巻き込まれたのは、俺らが原因だから。」

「……よくあるのか?」


さすがに命の危険を感じた。かと言って、素直に怖かったとも言えず、俺はごまかすように話を反らした。

あんな多数の刃物を持った大人を素手で相手するなんて、普通に怖いしありえない。けがしたら洒落にならんだろうし。実際、俺は真っ先に逃げようとした。

だからこそ、手慣れたように対処する2人のことを少し怖く感じる。刃物を持った複数の男を素手で倒せてしまうところも。


「まー、最近はなかったけどな。瑛史は次男坊だからまだマシって感じだな。新太兄ちゃんのほうが酷い。ま、心配すんな。お前にゃ傷1つつけさせねぇよ。大事な弟分だからな。」

「っ俺はいいから!自分の心配しろよ!」


俺は今守られてただけ。何もできなかった。せっかく2人や組員の人たちに見てもらってんのに、庇われるだけ。けど、それを改めて湧洞の口から聞くと無性に悔しく感じ、つい怒鳴ってしまった。

ハッと我に返ったときには、湧洞は意表を突かれたかのように目を丸くしていた。

やってしまった。これでは駄々をこねているような子どもと変わらない。湧洞だって、何もできなかった奴にこんなことを言われるのは心外だろう。

血の気が引いた心地で恐る恐る湧洞の顔を窺っていると、湧洞は肩を震わせて大爆笑し始めた。


「おまっ……お前、俺のこと心配してんのか?いい奴だな!ははっ。優しい弟分持って俺らは幸せだよ。」

「からかってんじゃねぇ!」

「からかってなんかねぇよ。俺は嬉しいぜ。弟分がこんだけ俺らのこと慕ってくれてんならな。最近は周りにもめっきり心配なんてされなくなったからなー。新鮮な感じだ。」

「……心配なんてしてねぇし。」


拗ねたようになった口調に顔を赤くしながら俺は湧洞に目を向けた。

確かに、人に心配されるような質じゃなさそうだ。そう考えると、新鮮に感じるのも納得だ。


「俺らはずっと2人1組でやってきたからな。お前が来てからずっと瑛史は張り切っててな。大事な弟分守んねぇとなって。」

「は?」

「あいつ、兄貴しかいねぇから、弟とかに憧れてんだよ。見たことないくらい喜んでた。」

「……。」

「だからさ、龍司。あいつにもうちょい兄貴気分味わわせてやってくれよ。」

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