これは好機
畑本視点です
「……なんだ?龍司、その目は。まさか、俺を疑ってんのか?」
「……なんでも信じられるほど、俺はお前のこと知らねぇし。」
「ふん。そりゃそうだ。なんでもかんでも信用しちまうよりはマシだな。でも、俺はけっこーお前のこと買ってんだぜ。瑛史がどう思ってんのかは知らねぇがな。お前以外であいつに喧嘩を売り返しに来た奴は今までいなかったからな。根性ある奴だなって今は思ってるよ。根性ある奴は伸びる可能性がある。じゃあ俺が一肌脱いで育てるのもアリだなって思ってよ。」
「何の風の吹き回しだよ……。……お前は、俺が茶戸の隣に立てるって思ってんのか?」
湧洞の言葉に照れ隠しに悪態をついたものの、俺はつい聞き返した。
もちろん、湧洞が言うことには、俺は茶戸に認めてもらいたいわけだから、認めてもらえるためなら喧嘩も売るし、隣にだって立ってもいい。湧洞がそう言うってことは、俺は茶戸の隣に立てる素質があるんだろうし、湧洞の提案を考えてみてもいいかもしれない。
少し黙り込み思考に沈んだ俺に、湧洞は声をかけてきた。
「当然、こっからお前が能力を上げていけば、あいつの左腕になることだって可能だろうさ。あいつの周りは物騒だから、鍛えるアテも山のようにある。適当に相手見繕って場数踏ませてやれるからな。センスがあれば、あいつの隣に立てる日もすぐだろう。」
「……そう、かよ。このこと、あいつは知ってんのかよ。お前が俺を勧誘しても、あいつがいいって言うかは分かんねぇだろ。話に乗った挙げ句、あいつの一言で放り出されるのはゴメンだぞ。」
「いや。俺の独断だよ。ただまぁ、あいつはそこらへんテキトーだからな。それに、あいつの一番の相棒たる俺が持ちかけた話だ。俺がよしとした話なら良しにするだろう。心配すんな。」
自信に満ちた笑みを見せた湧洞に、俺は目を向けた。そして、逡巡しながらも湧洞の提案に首を縦に振った。
湧洞がここまで言うんだ。それに、あいつの近くにいれば、それだけあいつに認めてもらえる機会も多いだろう。これは好機なんだ。有効活用してやろうじゃねぇか。
「あいつが俺を認めてくれるなら、俺があいつの隣に立てる可能性があるんなら。湧洞、お前のその提案に乗ってやる。俺を、茶戸の隣に立つのに相応しい男にしてくれ。」
「あぁ。任せとけ、龍司。」




