想定外の勧誘
畑本視点です
すっかり忘れていた本題に俺が湧洞を見つめると、湧洞は笑みを浮かべ頷いた。
「瑛史のことなぁ……。まずあいつは、超ガキ大将タイプだ。基本わがままだし、人の言うことは聞かない。飽きると丸投げ、面倒なことも丸投げ。面白半分に首を突っ込んでは場を引っ掻き回す。お前、1ヶ月も一緒にいてみろ?時期に殴り飛ばしたくなるぞ。」
「……まじでお前なんで一緒にいるんだよ。」
次々に出てくる茶戸の悪口に、俺は2回目のツッコミを入れた。
1週間前といい、今のといい、湧洞は本当に茶戸の相棒なのか?いつか背中から襲いかかるために待ち構えてるだけじゃねぇのか?
俺のドン引きした顔を見て、湧洞は声をたてて笑った。
「ははっ。本当に、そうだよな。でも、あいつと離れようとは思わないんだよな。」
「なんでだ?」
「言ったろ?俺はあいつに惚れ込んでんだ。あいつなら俺に最高の景色を見せてくれるって思えるし、俺のすべてを尽くして助けになりたいと思わせる何を持ってる。」
「……。」
「お前もそうだろ?瑛史に失望されたくないって、あいつの目に留まりたいって意味じゃないのか?」
湧洞の言ったことに、俺は覚えのある感じがしてつい目を反らして口をつぐんだ。
確かに俺は、茶戸に失望されたくなくてあの日自分から茶戸に会いに行った。こうして湧洞に会いに来た。これは茶戸の目に留まりたくてしてるのかもしれない。
俺は茶戸にすごい奴だと認めてほしい。相手をする価値があると思ってほしい。……のかもしれない。
「……あいつは俺のこと期待外れって言ってたけど、挽回できるか?」
「なんだ、お前。まだあいつと喧嘩したいのか。物好きな奴め。んー……。ムリだな!今のお前は弱すぎる!」
「てめぇ気ぃ使うとかねぇのかこの野郎!」
明るい笑みでそう言い切った湧洞に、俺はつい言い返した。
何も断言することもないだろうが。俺が弱い……のは百歩、いや千歩譲って事実としても、本人に向かって言うこたねぇだろ。つか弱くねぇし。
俺の叫びにまったく臆することなく、湧洞は次の提案をしてきた。
「今はって言ってんだろ。龍司、お前、俺と一緒に瑛史の隣に立つのは興味ねぇか?」
「はぁ?……あいつの下につけってのか?」
「違ぇ。隣っつってんだろ。ちょうど、俺1人であいつのお守りするのも手こずってたんだ。お前なら、ちょっと鍛えれば今よりよくなるだろうし、歓迎するぜ。」
湧洞からの思いがけない勧誘に、俺はその真意を探るように湧洞を見つめた。こいつは思った以上にイイ性格してる。面白そうだからとか、そういう理由で俺も巻き込むことも平気でするだろう。




