リベンジ要請
畑本視点です
「……あ、龍司じゃねぇか。ウチになんか用か?」
「……あぁ。茶戸、あんたに会いに来た。」
翌日、俺は旗下高の校門前で茶戸を待った。放課後になり、昨日も一緒にいた男と出てきた茶戸は、俺の姿を見ると、驚いた顔をしている。
「俺に?何しに来たんだ?」
「昨日の喧嘩のリベンジに。」
「はぁ?やだよ、めんどくせぇ。他当たれって。」
「っ……俺は!お前に失望されたままは嫌なんだよ!」
俺がそう叫ぶと、茶戸はポカンと俺を見つめた。隣の男がニヤニヤと俺を見て、茶戸に話しかけた。
「瑛史、1回くらいやってやれよ。この1年、意外と根性あるじゃねぇか。」
「景太郎……。あー、んー……。おっし。景太郎、お前が代わりにやってやれよ。」
「は?」
茶戸の突然の提案に、隣の男はガンを飛ばすように眉を潜め茶戸を睨んだ。
俺も怒鳴りたいくらいだ。厄介払いするように他人に流すなんて、バカにしてるとしか思えない。
そいつの睨みをおどけたように怖い怖いと言いながら、茶戸は俺たちにその意図を話した。
「おい、龍司。こいつは湧洞景太郎。俺の相棒だ。俺はどの喧嘩ももれなくこいつに背を預けてきた。だから、お前がこいつを倒せたら、また俺が相手してやる。」
「おいっ!俺はお前と……!」
「はぁ……。瑛史、貸しイチだからな。おい龍司。こっち来い。」
俺が茶戸に食ってかかっていると、隣の男……湧洞が顎で旗下高の校庭を示した。なぜか知らんがやる気を出したらしい。
俺は釈然としない気持ちを抱えながら、湧洞の言う通り校庭に足を踏み入れた。
「……湧洞。なんで急にやる気出したんだよ。」
「あ?……お前、瑛史が一度言ったことを反故にするわけねぇだろ。あいつは傍若無人の権化。唯我独尊を地でいく男。わがままが服着て歩いてるようなやつだぞ。俺が一言二言何言ったとしても、あいつの前に俺がお前の相手すんのは変わんねぇんだよ。」
「景太郎、全部聞こえてるぞ。後で一発な。」
「聞こえるように言ってんだよ、バカ。龍司、やるとしても1日1回。どっちかが倒れるまで、もしくは遅くとも19時まで。いいな。」
ダルそうに言う湧洞に、俺も渋々ながら頷いた。湧洞がそう言うってことは、おそらく茶戸の意思は覆らないんだろう。無駄なことに時間を使うより、奴の気が済むまで湧洞とやってやろう。
「頑張れよー。」
「外野うるせぇぞ。龍司、いつでも来い。」




