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あっさりした決着

畑本視点です

「すげぇな、瑛史。他校の1年にまで名が売れてるなんて。」

「だな!龍司、お前どこで俺の名前聞いたんだ?」

「どこっ……、だと?てめぇの名前なんて、町中に溢れてらぁ。今じゃ知らねぇ奴はモグリとすら言われんだぞ!」


大きく振りかぶった拳もすべて軽々避けていく茶戸に、俺はイライラしながら問いかけにも応えていく。

よく考えりゃ、答えてやる必要はねぇ。何を律儀に応えてやってんだ、俺。

何発か俺がパンチを放ち終えると、茶戸は待ち構えていたように口角を上げた。


「さーて、そろそろ俺からもいくぜ。ふっ……。おらよっ……!」


拳を握りしめた茶戸が、軽いテンションで俺に殴りかかってくる。


「ぐっ……!?あ”ぁ”っ……。」


みぞおちに入った拳は、放った茶戸の軽い様子とは裏腹に、重く深い一撃だった。上背のある俺の体が軽く飛び、後ろの塀に叩きつけられた。


「あぁ?おいおい、軽すぎだぞー、1年。」

「ふっ……くぅ……。なん、だ今の……。」


今までくらったことのない拳に、俺の体は混乱で早くも言うことを聞かなくなっていた。立ち上がることもできず、痛みとショックに呻くしかできなかった。


「1年のくせに、根性ねぇんじゃねぇのか?立てよー。」

「龍司、無理はするなよ。リタイアするなら早めにな。」

「うる、せぇ。」


もう1人の男からも心配混じりの野次が飛ぶ。かろうじてそれに反抗の目は向けられたものの、俺の体はすでに負けを確信したかのようにピクリとも動かない。

こんな、一発で……。今まで数多くの奴等に喧嘩を売っては買い、日々殴り殴られてきた俺が……。これが、西高を潰すほどの男の攻撃なのか……?

俺が呆然としていると、茶戸は興醒めといった様子で体から力を抜いた。


「んだ?もう終わりか?……ちっ。期待外れか。景太郎、行くぞ。」

「あ?もういいのか?龍司、まぁ気にすんな。お前と瑛史じゃ、年季と実力が違うんだからな。」


未練も何もなく去っていく2人に、俺は慌てて引き止めた。

こんなたった一発で、こんな短時間で……。それはあまりに惜しい。俺はまだやれる。あんたが失望するような男じゃないんだ。

しかし、俺の声に振り返ることもなく、2人は行ってしまった。


「……くそ……。くそっくそっくそっ……!」


俺は悔しさに思わず涙した。

俺は弱くない、むしろ強いと思ってた。無敗とまでは言わずとも、連戦連勝だったし、最近では南高の龍司といえば一目置かれるまでになった。だからこそ、茶戸も俺に会いに来た。

なのに、こんなあっさり、たった一発のパンチをくらっただけでやられてしまうなんて、信じられない。


「……このまま、失望されたまま終わってたまるか……!俺は……茶戸に認められるくらいの男なんだ……!」

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