ついに進展……?
駿弥視点です
「駿弥兄って苦労性ね。10年後も20年後も貴斗兄に振り回されてるのが目に浮かぶようよ。」
「うげ……。……そんな未来、イヤなはずなのに悪くないかもとか思った自分がイヤ……。」
「駿弥兄ドンマイだわ。私なら、ゴメンだわ。貴斗兄に20年後も振り回されるなんて。」
「あはは……。貴斗さんと会長と色々することあって、大変だもんね。応援してるよ。」
苦笑いで俺を労う宇咲さんに、俺は項垂れたまま頷く。
おそらく宇咲さんが思う以上にあの2人に付き合うのは大変だけど、そう思ってくれるだけでもありがたい。
「ありがとう宇咲さん……。」
「ていうか、前から気になってたんだけど、駿弥兄ったらいつまで初音姉様のこと名字で呼んでるの?名前で呼べばいいのに。」
「へぁ!?」
美南ちゃんからの一言に、元々熱かった顔がさらに熱くなった。耳なんて、燃えてなくなったんじゃないかと思うくらい熱い。
「あ、私も思ってたの!駿弥くん、別にいいんだよ?私、名前で呼ばれても。私だって図々しく呼んでるんだし。」
宇咲さんからもそんなことを言われ、俺の頭は沸騰寸前だ。俺の体は処理落ちしたパソコンのように動きを止めた。
な、名前呼び……!ハードルの高いことを……っ。
女の子、それも好意を持つ子の名前を呼ぶってことの重大さを、きっと彼女たちは分からないんだろうな……。
俺が動きを止めているを見て不思議そうにしている2人に、凛華さんが微笑ましそうに目を細めた。
「駿弥くんも大変ね。美南、駿弥くんには駿弥くんのペースがあるのよ。あまり介入するのは、褒められることじゃないわ。」
「むぅ……。分かってるわ、ママ。気にしないで、駿弥兄。」
「あ、う、うん。」
美南ちゃんがあっさり引いてしまい、尚のこと悶々とした気持ちが広がる。
このまま美南ちゃんが押し切ってくれれば、もしかしたら宇咲さんを名前で呼べてたかもしれないのに……。タイミングを完全に逃した。ここからの軌道修正は難しい……。
「でも、駿弥くんも、全然気にしなくていいからね。私はいつでも名前でよんでくれるの、大歓迎だから。」
「あ、あぁ!その……もう少し待って。決心できたら、その時言うよ。」
最後に宇咲さんが投げてくれたチャンスに、渡りに船とばかりに飛びついた。
これで猶予ができた。いつか、宇咲さんを名前で呼ぶときにはきっと……。
次話から初音視点が始まります




