私の扱いについて
舞菜視点です
自己紹介が終わったところで、先輩が私に声をかけてきた。
「舞菜ちゃん、コーヒーと紅茶、どっちがいい?あ、ココアもあるよ。」
「え?うーん、じゃあココアで!」
「若!それは私が」
「景介はここ仕切るのが今日の仕事だろ?ほら、話進めとけって。」
びっくりするくらいの速さで立ち上がった会長を無理やり座らせると、先輩は軽い足取りで部屋を出ていった。先輩につれない対応をされた会長が見たことないくらい落ち込んでいるのをよそに、お父さんズが話を進めていく。
「舞菜さんは貴斗や景介から、この家のことについて話を聞いてるか?」
「はい。でも、なんか思ってたのと違いますね。もっと怖い人ばっかかと思ってました。こう、歴戦の猛者みたいな。親分とかも、傷だらけですごムグ」
「申し訳ありません、親父!水輿さん、貴女何を言ってるんですか!親父を前に失礼すぎる!」
私が喋ってると、急に会長が口を手で塞いできた。そしてすごい剣幕で私に怒ってくる。
そんなこと言われても。ヤクザのイメージなんて、そういうのなんだもん。
「ムグムグ。ムゥ、ムグ!」
「お願いですから、変なこと言わないでください。」
「むん。」
やっと解放され、大きく息を吸い込んだ。
まったく。会長ったら、本当に女の子の扱いがなってないなぁ。
ムッとしながら会長を睨むと、どこからか伸びてきた手が会長の頭を叩いた。
「え……。」
手の先を見ると、会長のお父さんが何食わぬ顔をしている。そして、静かな声で会長にお説教をし始めた。
「景介。私はお前を、女性を丁重に扱うこともできない嘆かわしい男に育てた覚えはない。あまつさえ、彼女はお前の交際相手。本来なら下にも置かぬ扱いをして然るべきだと、反省しなさい。」
「……分かってるよ、父さん。すいませんでした、水輿さん。手荒にしました。」
「えぇ!?どうしちゃったんですか?やめてくださいよ、会長。そんな怒ってませんよ。ていうか、そんな丁寧な扱いされ慣れてないんで、大丈夫です。会長のお父さんも!」
急に謝ってくる会長に私が慌ててフォローすると、会長と会長のお父さんは揃ってため息をついた。
2人とも、フォローしたのにひどい。
「景介、これはお前に教育的指導が必要だな。」
「そうみたいだね。水輿さん。貴女に前説明しましたよね。私のそばにいるだけで危険な目に遭うと。私が生きる世界はそういうところです。だからこそ、それでも私のそばにいるという貴女へ、私は尊敬と感謝をもって接します。慣れないからいいとか、そういう話ではありません。丁重に扱われるべき人を粗雑に扱うような人間ではありませんので。」




