顔合わせ
舞菜視点です
「うーわぁ……。おっきい家ー……。ほんとにここが先輩の家なんですか?」
「そうだよ。俺の家で、悪名高い茶戸家の根城ってワケ。」
「あっはは。先輩ってば。」
私舞菜は、憧れの会長のカノジョになれちゃった超ラッキーガール。会長の彼女になって次の日曜日に、私は先輩のおうちに招待されていた。先輩と会長のお父さんに会うためだ。
そんな、いきなりお父さんに紹介だなんて……!と舞い上がった私に、招待主である会長は呆れた目で”安全を確保するためですよ”と言ってきた。本当、そういうとこがダメダメだと思う、会長は。ちょっとは乙女心というものの機微を覚えるべきだよ。
「お邪魔しまーす。わぁ、日本って感じですね!お庭も広ーい。池まである!大豪邸じゃないですか!先輩って実はお坊っちゃまなんですね!」
「水輿さん、あんまりうろうろしないでください。親父もお待ちです。」
嘘みたいに広い先輩の家を、あっちへうろうろこっちへうろうろする私に、会長が襟首を掴むように引き寄せる。乱雑すぎて、キュンともしない手付き。
私はそのまま1つのお部屋の前まで連れて行かれた。他のところよりも少し豪華な装飾をしてある扉をノックした先輩が、声をかけると同時に扉を開けた。
「親父お待たせー。連れてきたよ。」
「貴斗。客人の前でくらい礼儀をわきまえろ。」
「生憎と、親父に対して礼儀なんて持ち合わせてないんだよね。舞菜ちゃん、座って。紹介するよ。こっちが俺の父さん。で、この人が景介の父親。」
先輩の言葉に、前に座る2人の顔を見た。着物を着た方が先輩の、スーツを着た方が会長のお父さんらしい。
先輩も会長も、父親似なんだな。2人をダンディにしたらこんな感じ!って顔してる。
「えっと、初めまして!水輿舞菜っていいます。よろしくお願いします!」
「えらい元気のいいお嬢さんだ。俺は瑛史。舞菜さん、と呼んでもいいかな。」
「お好きなように!」
「ははっ。そうかい。んじゃ、舞菜さん。悪かったな、急に呼んで。そんな時間はかからんから、まぁ楽にしてくれ。」
先輩のお父さんは先輩に似てフレンドリーだ!
笑みを浮かべた接しやすい態度の先輩のお父さんに、私は安心してヘラっと笑った。
会長のお父さんはどんな人だろう。私が目を向けると、会長のお父さんは静かに柔らかく笑った。
おぉ、会長バージョンの会長みたいな人だ。怖い人じゃなさそう。
「水輿さん。私が景介の父、景太郎です。今日は来てくれてありがとう。会えて嬉しいよ。」
「私も嬉しいです。へへっ。」
2人とも話しやすそうでよかった。私はすっかりリラックスして笑みを浮かべた。




