最悪だ……!
景介視点です
これからどこを回ろうか。
若は俺の門限を夜7時と言っていたが、もちろんそんなものがあるはずがない。つまり、7時までお嬢とデートするから干渉するなということだろう。現在昼の2時。このまま事務所に帰ってももちろん問題はないが、我々の抗争に感化され、治安も多少悪くなっているかもしれない。それを取り締まってから帰ろう。
華やかで賑やかな通りを外れ、裏路地の方へ入っていく。少し清掃が行き届いていないようだ。こういった清潔感の欠如も、後々治安の悪さにつながっていく。今後時間のあるときに、組員を動員して清掃活動を実施できるか、企画書を持って若にご提案しにいこう。以前にもやったことがあるから、通りやすいはずだ。
一度メイン通りを外れると、そこは薄暗くなっていて、人通りも格段になくなっている。静かな道を注意深く見ながら、俺は更に奥へ進んでいった。
それぞれ問題点を洗い出し、茶戸家で対応可能かどうかを考えていく。若がこの街を平和なものにしたいと考えてらっしゃる以上、俺もその理想を追求する手伝いをしていきたい。
あちこち回り、そろそろ4時。もういい時間だろう。今日はこれくらいにしておいて、帰宅しよう。俺はメイン通りへ向かって歩いた。
「……彼女は、無事戻れたんだろうか。」
入り組んだ路地を抜け、あと少しというところで、背後に不審な気配がした。ガサガサと物の動く音、衣擦れの音がかすかに聞こえる。その気配は、よく知った悪意に満ちたものだ。
「チッ……手間をかけさせる……。どこか別の」
「いた!会長!」
周囲を巻き込まないよう場所を変えようと身を翻したとき、横から声が聞こえた。慌ててそちらを見ると、水輿さんが俺を見て安心したように笑みを見せている。そして、あろうことかこちらへ走り寄ってきた。
またややこしいことになった。これで彼女が俺の知り合いだと奴等に認識された。
彼女が、悪意の獲物になってしまう。
「クソッ。しょうがないやつだ、まったく!止まるな、こっちへ来い!」
「ふぇ!?あ、は、はい!」
彼女に呼びかけると同時に、俺も走り寄る。
とにかく、彼女の安全確保。これだけはなんとしてでも守らなくては。
「貴女、ほんとにバカか!なぜこんなところに来た!」
「だ、だって会長行っちゃうし……。」
「来るなと言っただろう!あぁ、くそっ……。……とにかく、足は止めるな。メイン通りから離れ、安全を確保できたら、貴女の家まで送る。それまで、俺から絶対に離れるな。」
「は、はい!」




