会長、ごめんなさい
初音視点です
「あーっ!初音ちゃん!」
貴斗さんがやっていたお仕事が少し落ち着いてきたからと、今日は久しぶりにみんなでお出かけすることになった。会長と駿弥くんも同行して、駅前を中心に歩き回っていた。
昼食を食べ終わり、私たちがウィンドウショッピングをしていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「あ、舞菜ちゃん。久しぶり。」
「うんうん!久しぶり!茶戸先輩も一緒?あ、デートか!」
「あ、今日は違うの。」
1人で買い物に来ていたらしい舞菜ちゃんは、こちらに寄ってくると明るく話しかけてきた。
「会長と駿弥くんも一緒だよ。」
「え、会長もいるの?どこ?」
「今飲み物買ってきてくれてるの。そろそろ戻ってくるんじゃないかな?」
「もう来るよ。ほら。景介、駿弥。」
貴斗さんが顔を向けている方へ目をやると、手にカップを持った会長と駿弥くんがこちらへ歩いてきていた。
「貴斗、お待たせしま……げ……。」
「かーいちょー!久しぶりですねぇ!お元気でしたか?」
途中まで穏やかな微笑みで貴斗さんを見ていたのに、舞菜ちゃんを見た瞬間これまでに見たことのないような顔をする会長と、それに臆することなくテンション高く突っ込んでいく舞菜ちゃん。
……貴斗さんも言ってたけど、会長、本当に舞菜ちゃんのことが苦手なんだなぁ。
「貴斗、宇咲さん、お待たせ。これが貴斗で、これが……宇咲さん。」
「ありがとう、駿弥くん。」
「ありがと。にしても、景介ってばホントモテるねー。舞菜ちゃん、今暇?もしよければ一緒に来る?」
「え”……。」
「え!いいんですか?先輩ってば太っ腹!やった、お言葉に甘えまーす。行きましょ、会長。」
貴斗さんの言葉に、舞菜ちゃんはすぐに会長の腕を取った。迷いのないその行動に、会長は固まっている。
「いいんですか?舞菜ちゃんも一緒で。会長は……大変そうですよ?」
あんまりにも会長が乗り気でない顔をしているのが気にかかって、貴斗さんにそう聞いてしまった。
元々貴斗さんも、学校の人と休日に遊ぶことはないって言ってたことがあるから、もしかしたら舞菜ちゃんが私の友達だからって、気を遣ってくれたのかも。
「大丈夫だよ。景介もいい加減、俺以外の世界を見るべきだしね。それに……うまくいけば、景介たちを撒いて2人でデートできるかもしれないからさ。イヤ?俺とデート。」
「!嬉しいです!ほんとにできるんですか?」
貴斗さんからの予想外の言葉に、思わず目を輝かせて聞き返した。
もちろん嬉しいに決まってる。だって、デートなんて最近してない。貴斗さんはいつも忙しいから、してる時間がないんだから。忙しくしてる貴斗さんに、私がデートしたいなんてわがまま言えないから、両手で数えられるくらいしかしたことがない。
会長には悪いけど、デートの誘惑は耐え難いよね。
私の表情を満足そうに見た貴斗さんは、私の手を強く握った。
「オッケー。すぐ2人になれるように場を整えるね。」




