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帰還の日

景介視点です

「あぁ、やっと帰れる……。初音元気かな……。問題とか起きてなかったかな……。」

「お嬢も若のお戻りを心待ちになさっているはずですよ。お怪我はありませんね。お召し物は汚れてませんか?」


ウロウロと落ち着かない様子で歩き回る若の全身を軽く見回し、問題がないことを確認する。

今日は計画していたすべての行程を終え、事務所へ帰る日だ。もうすでに荷物は積み終わり、後は車に乗り込むだけ。

特別長い日程ではなかったが、それでもすごく疲れの出た日々だった。毎日気を緩められず、食事もコンビニで買った代わり映えのない弁当ばかり。休める暇もなく酷使していたせいで、体はバキバキだ。

毎回、長中期で遠征をした組員は2,3日の休暇が与えられる。今回も参加した組員は休みとなっている。無論、俺の最優先任務である若の側近の仕事に休みはないので俺は若の側近くに侍るつもりだが、日常に戻れるし、側近以外の仕事が回ってくることもないので、体の力も抜けるだろう。


「おい貴斗。早く帰るぞ。」

「んー。景介、帰ろう。」

「はい。」


若とともに車へ乗り込み、都内の事務所へ走らせる。ここから事務所まではおよそ2時間。すぐ着くだろう。

車内でも書類は手離せない。手持ちのタブレットで処理できるものは今の内に処理していき、家での残業を減らさなければ。


「景介、この金の流れだけどさぁ、どこを経由してったか分かる資料ない?」

「えぇと……こちらはいかがでしょうか。日も……あぁ、一致していますね。」

「んー……ありがと。……ここの金融、危ないなぁ……。洗浄先に使われてるかもなぁ。」


若の呟きに、俺も資料を見る。そこには、小さい規模で運営している地方金融の名がある。大金が動く前後で頻繁に出る名に、若の懸念はすぐに理解できた。

マネーロンダリングだ。不正に得た金品をどこかで換金することで、手元に目のつけられていない番号の紙幣が残るようにする方法だ。ヤクザのマネーロンダリングは法によって厳しく取り締まられていて、入送金はおろか、預金も認められていない。そんな状況にも関わらず、ここまで利用されているということは、よほどの確認不足か、……この金融と今回の組が繋がっているか。

これもしっかり調べなければ。かわいそうで間抜けな被害者となるか、卑劣な加害者となるか、すぐ判決は下されるだろう。


「若、こちらも調査しておきます。お任せください。」

「うん。これはあんま急いでないよ。今はとりあえず、あいつらを確実に起訴できる内容を優先して。」

「承知しました。」


再び手元の種類に目を落とし、処理を進めていく。

若と何回か書類の確認などの言葉を交わす以外、無言のまま車は進み、ついに事務所に到着した。


「……着いたね。景介、1週間ご苦労さん。」

「ありがたいお言葉です。若も、1週間お疲れ様でございました。」


若からの労いに俺も応え、2人で静かに拳を合わせた。

長かった遠征も終わり、これで一旦待ち焦がれた日常へ戻れるのだ。

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