始末の行方
貴斗視点です
「ったく……。景太郎おじさんはこれやれる?」
「はい。対応策を練っておきましょう。」
「よろしく。親父、おじさんちょっと借りるね。で、だよ。どうすんの?」
2人からの報告が終わり、俺は親父に目を向ける。
現時点で分かっていることだけでも、今回の相手に温情をかける理由はなくなっている。厳重に対処し、潰してしまう必要がある。しかし、どこまでやるかの判断は親父に仰がなくてはいけない。
俺の問いかけに、親父は面倒くさそうに俺の方へ目を向けた。
「どうするもねぇだろ。全員サツに引き渡して仕舞ぇだ。俺らはてめぇの傘下の始末をつけただけ。私刑の権限はねぇ。」
「はいはい。分かってるって。景介、警察にお届けする時の証拠もまとめといて。茶戸家の醜聞になることも……まぁ、監督不行き届きと教育不足の自業自得ということで。隠し立てしなくてもいいよ。知られて特別咎められるようなこと、俺らはやってないもんね。」
「承知しました。自らの手で茶戸家の悪事を書き連ねるなんて、この上ない背徳感ですね。ゾクゾクします。」
肩を竦め、冗談めかして言った景介に、俺も笑って確かに、と返した。
反社会的組織の若頭なんてやってるくせに何を今更、という話だが、茶戸家として、また茶戸家直属の組員として抱えている者が、法に触れるようなことをしでかすことは滅多にない。認めるのは癪だが、うちの、特に古参の組員はみな親父に惚れ込んで入っている。だから、親父がやるなといったことをわざわざやることもないし、互いに注意換気して抵触することもないようにしている。
茶戸家関連組織で違法行為を行うのは、だいたい傘下の末端組織か、他組織から移動してきたような奴だ。今回の奴等だって、末端も末端。茶戸家の恩恵で運営できていたようなところだ。ただ、今回の件はうちの発見も遅れ、少し社会に損害も出してしまったから、反省の意味も込めて珍しく始末書代わりの加害届けを出そうということだ。
まぁ、反省文はいっぱい書かされた経験があるから、手慣れたものだ。うん。
「んじゃ、この後の指揮は貴斗、お前に一任する。俺ぁチマチマ頭使うこた向いてねぇ。」
「はぁ?俺だって嫌なんだけど。面倒な仕事ばっか押し付けてきてさぁ。だいたい、今回のこと始末つけるって決めたの親父だし、傘下管理できてなかったのも親父だし、責任とるべきも親父でしょ?指揮くらい最後まで執ってくんない?」
「やだね、めんどくせぇ。ほら、お前こういう粗探し得意だろ?チマチマした書類整理とかもさ。」
「俺のことバカにしてる?ほんと神経逆撫ですんの得意だよね、親父は。」
いちいち勘に障る親父の言い様に、俺も言葉を返していき、そのままいつものように喧嘩に発展していく。そして、それなりに応酬を繰り返し、景太郎おじさんにストップをかけられたところで、俺たちが現在拠点として使っている場所へ着いた。




