車内報告会
貴斗視点です
「はぁ……。やってらんないよね、こんなの。景介、そこの山ちょーだい。違う、2時の方向、それ。ありがと。ねー親父。クソ程の役にも立ってないんだからさぁ、これ運び出すくらいしてくんない?」
「親を顎で使うたぁ、偉くなったもんだな。」
「立ってるもんは親でも使えって、先達のありがたーいことわざもあるでしょ。忙しいんだからちゃっちゃとやってくれる?」
暇そうな親父を動かし、順調に処理作業を進めていく。ある程度裏取引の証拠となりそうなものも見つかり、本日の作業は持ち帰ってからでもできるほどになった。
「終わりーっ。後は拠点でやろう。まとめて。」
「はい。若、この後車内で、現時点でご報告できることをお伝えいたします。拠点に戻り次第食事、その後打ち合わせでよろしいでしょうか。」
「ん。親父もそれでいいよね。」
「あぁ。つうことだ。各班責任者と役持ちは、飯食った後集合しろよ。」
親父の呼び掛けに返事を返し、この場は解散となった。俺は親父と共に車に乗り込み、さっそく報告会だ。
「こちらが過去1年間の収支歴です。」
「んー……2ヶ月半前に大っきい実入りがあったみたいだね。500万が一括で出てる。その後細かい収入が定期的に1ヶ月半……。」
「日もアテと被ってんだろ。もういいじゃねぇか。」
「うるさいよ親父。景介、家帰ってからでいいから、こいつの携帯の行動履歴出せる?」
景介が差し出してきた書類と、俺の頭の中にある情報を照らし合わせ、次の指示を出す。
幹部格の中でも現場に出ることが多い人物だったようだ。取引について書かれた書類の中で、1人の人物の名前が頻出している。つまり、こいつの足取りを辿れたら、取引の証拠となる可能性が高いということだ。
「もちろんです、若。4日後の朝までには必ず提出いたします。」
景介の自信に満ちた笑みに頷き、続けて景太郎おじさんの報告を聞いていく。
「……え、ちょっと待って。ねぇ、それってつまり、海外勢力と繋がろうとしてたってこと?コピー見せて。」
「こちらです。4文目、2行目の部分にご注目ください。」
「……”外から買うなら、2日後仲介役を引き合わせる”……。」
「それに対して詳細を聞いているので、少なくともこの時点で興味を持っていると思われます。そして、これがその2日後のやりとりです。」
おじさんからの報告に軽い頭痛を覚えながら、次の資料を受け取る。
中身はざっくりいうと取引するかは考え中、ということだった。しかし、文面を見る限りこの上なく前向きな様子。日付が3ヶ月前であることを踏まえると、何かしらの取引が成立していてもおかしくない。
まったく面倒なことをしてくれたものだ。どこと何を取引するつもりなのか調べなければならないし、海外勢を相手しないといけなくなる。茶戸家一族の力は日本の裏社会トップとして多少世界に効くとはいえ、国内に比べればその影響力は格段に落ちる。今の力関係で敵対するのはもちろん、暗雲を持ち込むのも忌避すべきことだ。
ことごとくバカなことをしてくれる。




