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俺たちの本分

景介視点です

「親父、りゅーちゃんには初音に専念してもらっていいでしょ?」

「あぁ。どうせお前が龍司を騙して連れてきてまで頼みたいことなんて、初音ちゃんしかいねぇだろうからな。」

「当然でしょ。俺にとって、初音以上に大切なモンなんて存在しないし。んじゃー、りゅーちゃん。そーいうことだから、初音のことよろしくね。」


若の言葉に、龍司さんは軽く眉を潜めたものの、何も言わずに頷いた。

若と親父が現在の状況を龍司さんに伝え、龍司さんはそれに確認したり質問を返したりして応えていく。話し合いが終わると、龍司さんは顔をしかめたまま考え込み、大きなため息をついた。


「だいぶ厄介なことになってんじゃねぇかよ……。おい、茶戸。言ったよな。俺の生徒を巻き込むなって。これはどう落とし前つけるつもりだ?」

「分かってるよ。もちろん覚悟はできてる。俺の命に代えても、どんな手を使うことになっても、初音のことだけは必ず守るよ。初音にも、そう説明したし、約束した。」


真剣な顔でそう言った若に、龍司さんは睨みながらもそれ以上追及することはなかった。

若は満足そうに笑うと、さらさらと手帳に連絡先を書き付け、龍司さんに手渡した。


「じゃ、そういうことで。何かあったら俺に連絡ちょーだいね。特に、初音に関することはもれなくね。」

「……分かってらぁ。お前、まじで女に気ぃ取られ過ぎてるといつか足元掬われるぞ。」


少し心配そうに若を見やり、龍司さんは立ち上がった。これで伝えるべきことは粗方伝えた。今日は解散だろう。

龍司さんの見送りのために俺も立ち、若と一緒に玄関まで向かう。


「……湧洞、お前もずっと出張るのか?」

「はい。私も、末端とはいえ幹部候補の1人であり、組員ですので。一応、学校にもそれらしい休学理由を出さなければいけませんね。」

「……お前らはまだ高校生、未成年ってこと、忘れてんじゃねぇのか?お前らの本分は勉学だ。暴力に明け暮れてる場合じゃねぇんだぞ。分かってんのか?」


眉根を寄せて睨む龍司さんに、若は肩を竦めて軽く笑った。


「今更でしょ、りゅーちゃん。俺は茶戸貴斗だよ。この世界を力で統べるべき立場にいるんだから、むしろ暴力に明け暮れるのが本分でしょ。」


若がそう断言すると、龍司さんは苦虫を噛み潰したような顔をした。

この世界に産まれた以上、俺も若も組の関係者であることは変わらない。そして、若はこの世界で生きていく覚悟、この世界のトップに立つ覚悟を持っている。だから、この世界の中で力によって守るべきものを守るのが、ある意味では正しい姿なのだ。


「……お前らがそう言うんならそうなんだろうがな。それが……それだけが正しいはずがねぇ。お前らなら、誰も傷つかず、悲しませねぇ方法だって作ることができたはずだ。お前らが傷ついて悲しむのは、お前らだけじゃねぇってことを忘れんじゃねぇぞ。」

「……分かってるよ。でも、これは俺がやんなくちゃいけないことだからさ。りゅーちゃん、分かって。」


諭すように静かな口調で言った若に、龍司さんは1つ舌打ちを鳴らし、門を潜っていった。


「まったく、りゅーちゃんてば心配性だね。」

「それだけのことがあったということでしょう。龍司さんも、色々と大変だったそうですから。さぁ若、戻りましょう。」


まだまだ抗争に向けて話し合わなければいけないことはたくさんある。休む暇もないほどだ。

若の後ろに付き従いながら、俺はこの充実した日々にため息をついた。

次話から駿弥視点が始まります

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