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謀られた再会

景介視点です

「りゅーちゃーん。準備はいい?行くよー。」

「……は?ここで話すんじゃねぇのかよ。」


若が畑本先生に声をかけ、その背を押していくのを、俺は隣で先生を促しながら着いていった。

昨日、俺は組の仕事で同席できなかったが、若が先生と話をつけ、お嬢の守護を担ってもらうことになったらしい。そして、現況の情報を提供するということでこれから移動すると若からは聞いている。

しかし、先生の様子からすると、場所を移すというのは伝えていなかったらしい。


「……おい、どういうこった、茶戸。なんだ、これは。」

「えー?ウチの車だよ、もちろん。柳田、お待たせ。」

「おかえりなさい、若。お初にお目にかかります、龍司さん。私は、茶戸家のドライバーを任されております、柳田と申します。親父と前任ドライバーの静木からお話は伺っております。今後ともどうぞよろしくお願いします。」

「あ、あぁ……。畑本だ、よろしく。じゃねぇ!おい茶戸!いったい何の真似だ!」


柳田さんの丁寧な挨拶に呆気にとられながら返事をした先生は、それでもすぐに我に返って若に鋭い目を向けた。

若はそれに笑って誤魔化しながら車の中を指差した。


「まぁまぁ。早く乗んなよ。柳田、初音はちゃんと帰したね?」

「はい。無事お送りいたしました。」


まだ渋っている先生を無理矢理に車内に押し込み、車は出発した。

先生は若の態度にイライラしているのか、眉を寄せ貧乏ゆすりをしている。おそらく、この車の向かう先をなんとなく察しているからだろう。

そんな先生の様子も気にせず、車は目的地へと到着した。


「さ、りゅーちゃん。着いたよ。中で話そっか。」


若は笑って門の中へ先生……龍司さんを招いた。

着いたのは茶戸家の前だ。若の自宅であり、茶戸家の事務所。当然親父もいるし、就業時間である父さんもいるだろう。……龍司さんにとっては、一番来たくなかった所に違いない。

若が門を潜るよう促すも、龍司さんは顔を強張らせ、生唾を飲んで背を向けた。


「……俺ぁ帰る。」

「えぇ?ちょっとりゅーちゃん。そりゃないでしょ。せっかく場を整えたのに。ね、欲しい情報全部あげるって言ったでしょ。」

「……何?」


意味深に笑って言った若の言葉に、龍司さんは足を止め振り返った。


「聞いたよ、りゅーちゃん。親父たちの現況が気になってるんでしょ?中で待ってるよ。会ってきなよ。」

「それは……。」


続く言葉を失い、龍司さんは辛そうな顔をした。

若に龍司さんが親父たちのことを気にしているようだと伝えたのは俺だ。去年何度か聞かれたため、どのように対処するか、指示を仰いだ。今回のこれはそれを受けてのことだろうか。

言葉に迷っていた龍司さんは、それでも頑なに中に入ろうとはしない。


「……俺に、ここを潜る資格は……。」

「何言ってんの。親父も景太郎おじさんも待ってんだよ。」

「えぇ。早く向かわなければ、親父たちが出てきてしまいますよ。」


渋る龍司さんを若と2人がかりで中に入れ、そのまま応接間の前まで連れていく。

話はすでに通してあるようで、中からは親父と父さんの声が聞こえてくる。

2人の声に、龍司さんはさらに身体を強張らせ、きつく拳を握り締めた。


「……。」

「りゅーちゃん、いい加減覚悟決めなよ。親父、連れてきた。今開けるよ。ほら、りゅーちゃん。」

「……茶戸、お前まじで1発殴るからな。」


若に恨めしげ目を向け、龍司さんは震える手で襖を開けた。

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