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覚悟を決めるべきは

貴斗視点です

景介が微笑みながらスーツを撫で説明をするのを、駿弥くんは興味深そうに聞いている。

何の参考にするのやら。一般企業に就くなら、10万程度の既製品でも十分通用する。プレタポルテ……高級既製品でも一目置かれるはずだ。景介の着ているようなスーツを着用する職なんて、よほどのもの。俺らみたいに舐められたら終わりの業界、そういった立場の人間に囲まれる環境にいる業界、組織の上層部、その上層部を相手取る業界……。駿弥くんが政府関係者、企業上層部を狙っているのならともかく……。


「……駿弥くんは将来、何になるんだろうねぇ。」

「……先パイ、分かって言ってますよね。」

「何のこと?」


空っ惚けて言う俺に、駿弥くんは悔しそうに顔を歪めた。


「先パイは、俺の何が不満なんですか。俺の何が足りないんですか。どうしたら」

「やだなぁ、駿弥くん。キミに不満なんて1つもないし、不足だってない。最高の友人の1人だと思ってるよ。」

「……先パイは存外、ずるい人ですね。」

「清廉潔白な性質で渡り歩ける世界にいないからね。……ていうか、駿弥くん。さっきも言ったけど、俺、キミの恋敵だよ?そんな近寄っていいワケ?」


どうあっても俺から離れる気のなさそうな駿弥くんに、俺は呆れ顔で問いかける。

もちろん俺の側には、基本初音がいて、そこを狙うという理由付けもできる。でも、そうでなくとも駿弥くんは今年度も初音と同じクラスだし……そう、羨ましいことに!俺の側で危険を冒してまで初音に近づく理由としては弱い気がする。

……まぁ、分かってるけどね。これも、茶戸の血が及ぼす影響力のせいかな。


「……俺は確かに、宇咲さんが好きです。1人の女性として、守りたいと思うし、側にいられたらと思ってます。……でも、それを先パイを排してまで叶えたいかと言われたら、分かりません。先パイのことはとても尊敬しています。誰よりも。きっと、それは一生変わりません。」

「高く買ってくれるもんだね。……俺はね、そんな風に思われるべき人間じゃないよ。わりとロクでもない性分してるし、後ろ暗いことだってたくさんある。」

「たとえそうだとしても、それ以上に尊敬すべき面を俺は知っています。宇咲さんのことは誰よりも大切に思っています。でも、他でもない先パイには、いつだって認めてほしいんです。」


そこまで強い目を俺に向けていた駿弥くんは、急に肩を落とし力なく項垂れた。


「……憧憬と恋慕。どちらも諦めたくないのに、今の俺には、どうすれば両方諦めずにいられるのか分かりません。」


途方に暮れたような顔でそう言った駿弥くんに、俺は一瞬かけるべき言葉を見失った。そして、そのことを自覚した瞬間、今ここで諦めなければいけないのは俺の方だと覚悟した。

ここらが潮時なのだ。今みたいに中途半端に拒絶したままで、これからもなんの問題もなく交際できないことは明白だったんだから。こちらが譲歩できるところまでは、歩み寄るのが正しい姿なんだろう。

本編PV数が15000を越えたので、数日前に短編集を更新しました。

よければ覗いてみてください。

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