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あの子を守りたいから

駿弥視点です

「先パイ……遅いっすよ……。」

「あはっ、ごっめーん。え、ていうか、こいつら誰?」


俺の恨みがましい視線に動じることなく、先パイは軽々しくテキトーに謝ってきた。そして、その場で先パイの顔を見ながら固まってしまった奴等をちらっと見て、今更なことを聞いてきた。

そんなの、俺だって知りたい。


「知りません。大方、取引相手だろうと思いますけど。……て、呑気に話してる場合じゃないんですけど!」

「あっはは。やー、ご苦労ご苦労。……にしても……ふふっ。まじで捕まってたんだ。あーはっはっは。」

「若、笑い事ではございませんよ。」

「や、分かってるけどさぁ……。くふっ……。駿弥くん、そっちはできる?俺こっちやるよ。景介倒れてる奴等外出して。あー、面白い画だった。」


未だ笑いを収められてない先パイが、軽い足取りでダブルスーツの男2人に近づいていく。余裕にも程があるという感じの歩調だ。

まじで一回殴ってやりたい。いつまで笑ってんですか、先パイ。俺も怒りますよ、そろそろ。

抱えた怒りのまま、掴まれていた腕を振りほどき、そのまま肘を打ち付ける。


「かはっ……。」

「ふぅ……。」


腹部を押さえ踞る男を見下ろし、肩を回す。全く、散々な結果になってしまった。


「訓練のやり直しだな。」


宇咲さんを頼むと言われてここへ来ているのに、これでは俺が不安だ。宇咲さんが傷つくようなことは、あってはならないことだ。

男らを全員縛り、先パイの方へ振り向いた。先パイはとてもいい笑顔でダブルスーツの男の上に座っている。


「あ、終わったー?お疲れさん。で、まじこれ誰。」

「だから知りませんて。今日の取引がどうとか言ってましたよ。それだけです。あ”ぁ”……まじで予定外。納得できない終わりだった。」

「あはっ。まぁ、頑張ったね。最初の4人に追加の7人。11人を1人で相手したんだもん。」

「……つまらないミスをしました。これでは、宇咲さんの護衛を、胸を張って引き受けられません。」

「真面目ー。イレギュラーな出来事だったんだし、そんなへこまなくてもいいのに。」


先パイの慰めに、俺は力なく首を振った。

中途半端な状態のまま、先パイたちが抜けた後に宇咲さんが襲撃されたら。その時、俺の力不足ゆえに被害が及んでしまったら。

俺は悔やんでも悔やみきれない。彼女を傷つけるなんて、考えるだけで背筋が凍るような心持ちだ。


「今のままでは、俺が安心できません。宇咲さんを守るために、より強くなりたいんです。」


宇咲さんは、俺の大切な女性だから。

彼女の恋人である先パイを、俺はまっすぐ見返した。彼女のことを恋しく、大切に想ってるのは、先パイだけではない。


「……まったく。初音も罪な子だよね。俺のみならず、駿弥くんまで手玉に取っちゃうんだから。」

「……当然、気づいてましたよね。」

「当たり前でしょ。駿弥くん分かりやすいんだもん。ね?恋敵くん。」


少し困ったような表情で笑いかけてくる先パイは、俺のこの思いをどう思ってるんだろう。あんなに大切に思って、あんなに可愛がって、何よりも一番に考えてる恋人に横恋慕する俺を、どう思ってるんだろう。


「……ここはもう出ようか。景介、全員運ぼう。話聞かないと。駿弥くん、そいつら階段前まで出して。」


つい、と顔を逸らし、先パイが後始末を促す。

逸らされた目と話に、先パイも気まずい思いをしているのだろうか、と感じてしまう。

気まずいのは俺もだ。先パイのことは誰より尊敬してるし、きっと敵う日は一生来ないんだろうとも思ってる。それでも、宇咲さんのことも諦めたくない。いつか俺のことを見てくれないか、先パイより俺のことを好きになってほしい。その考えが止められない。

先パイと宇咲さん。尊敬と恋情。俺は、どちらを選ぶべきなんだろう。

次話から貴斗視点が始まります

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