予想外の出来事
駿弥視点です
少し緊張しながら2人の到着を待っていると、足音が聞こえてきた。来たかと腰を上げたところで、違和感に気づいた。
明らかに2人分よりも多い足音が聞こえる。
そもそも先パイたちは足音を鳴らして歩かない。爪先から静かに下ろされ、うまく体重移動をし、姿勢よく歩く。たぶん、無意識に。
なら、この足音は誰のだ?
「どう考えても、味方じゃないのは……確かだよな。……やるか。」
息を潜め、神経を張り巡らせる。少しでも自分に不利な状況にならないように頭を回転させる。
悔しいが、相手次第では俺では太刀打ちできない。でも、少しの間持ち堪えれば、すぐ先パイたちが来る。それまで、俺は負けないように、倒れないようにすればいい。後は先パイたちがどうとでもしてくれる。
張り詰めた空気の中、足音の主たちがこちらへ向かってきた。そして、俺のいる部屋の扉を開け入ってきた。
「それで今日の取りひ……なんだこれはっ……。」
「お前は何モンだ!」
「……言う必要はない。どうせ、この瞬間しか、関わり合いにならないんだから。」
相対した相手は全部で7人。内2人は、素人鑑定で見た限りでは高級そうなダブルのスーツを着ている。
たぶん、その2人は上司にあたる存在だろう。残る5人が部下。この集団が何者かは知らないが、薬の取引に来たのは十中八九間違いないだろう。なら、ここで止めなければ。
「……はぁ。どこのガキか知らんが、てめぇ何したか分かってんのか。」
「ここにいた4人を伸した。それだけだな。」
「イキってんじゃねぇぞ、クソガキ。おい、やれ。」
予想通り、ダブルスーツの男が5人に命令してきた。それを受けて俺を取り囲むように並ぶ男たちを、静かに観察する。
今のところ、誰も武器は持っていないように見える。それなら、先パイの家であらゆるパターンを想定した訓練をした俺にだって、ある程度の対処はできる。
ただ如何せん、元々部屋がそこまで広くない中に俺も含めて8人と縛った男4人がいるのだ。動ける範囲が狭く、少し手こずってしまう。
「くそっ……。っ、ぅあっ……!」
相手の攻撃を避けるために後ろへ足を引いたとき、何かに足をとられ、一瞬体勢が崩れた。
それを見た相手が、3人束になって飛びかかってくる。
「くっ……。は、なせっ……!」
2人がかりで腕と肩を押さえられ、もう1人が拳を握り、腹部めがけて放とうとしてきている。
俺はとっさに腹に力を入れ、掴まれた腕を支点に下半身を持ち上げた。
「っるあっ!」
「がっ……。」
蹴りあげた足をそのまま前の男の脳天に振り下ろし、直撃させる。
うまくいってよかった。一か八かの賭けだったが、最大局面は乗りきった。
「はぁっ、はぁっ……。」
「あっれー、駿弥くん何コレ。どーいう状況?……てか、もしかして捕まってる?」
このとき聞こえてきた先パイの緊張感の欠片もない声に、これほど安堵したことはない。
やっと、2人が来た。




