駿弥くんとの付き合い方
景介視点です
「景介、明日の駿弥くんの。準備よろしくね。」
「承知しました。……若、1つお聞きしてもよろしいでしょうか。」
「んー?何?」
俺はその本意を確かめるべく、書類に向かっていた若に話しかけた。若は楽しそうに笑いながら顔を上げ、俺に応えた。
俺の聞きたいことに、検討がついているのだろうか。
「若は駿弥くんのことを、将来的にどのようにしようとお考えなのでしょうか。」
「受け入れることは絶対にない。それだけだね。」
「そうですか。承知しました。では私もそのように。」
若の簡潔な返答に、俺も簡単に応じる。
これまで若は、ずっと裏世界と表世界の線引きを明確にしてきた。駿弥くんのことは珍しくこちら側に入れているようだけれど、根本の考え方はお変わりないようで安心した。
「うん、そうして。よろしくね。……駿弥くんにこれ以上、こっちに関わらせるわけにはいかないからね。」
「そうですね。今でも、限度を超えている節がありますから。……まぁ、駿弥くんは、より関わりたいようですが。」
「ほんと、物好きだよねー。何があんなに駿弥くんに刺さったんだろ。俺とつるんでても、面白いことなんてないんだけど。」
心底不思議そうに首を傾げる若に、俺は苦笑を漏らす。若が素晴らしい方だからこそ、側にいて、共に歩みたいと感じているに違いない。若の側にいる理由なんて、若が素晴らしいから以外にない。
「駿弥くんも、若のご威光に触れ、その光に惹かれた者の1人ということでしょう。若の秀逸さは、万民に伝わるものですから。」
つまり、駿弥くんは俺の同志。そういうことだ。
「うへぇ……。景介が変な道に引きずり込んだわけ?やめてあげてよ、善良な学生を巻き込むのは。こっちとは関係のない、普通の世界に戻す予定なんだからね。」
「いえいえ。私は大したことなどしておりませんよ。」
「はぁ……。まぁいいや。景介、一応この件に絡めて江徒の動向調べといてね。くれぐれも駿弥くんに危険が及ばないように。裏で状況を動かせるなら動かしてもいいよ。やっぱ今回の取引はさ、動きが大きいし、抗争だってもう始まるだろうから。」
「承知しました。……抗争がいつ始まるかも、注視しておかなければなりませんね。」
「ほんとにねー。……卒業、できるといいね。俺ら。」
「えぇ。ですが、お嬢と共に卒業するというのも、また一興かと。」
「あー、ははっ。悩むねぇ。初音と一緒かぁ。それもいいかも。」
朗らかに笑った若に、俺もつられて笑いを溢す。
家の事情とはいえ、特殊な事例。出席数も危なくなるだろう。なんなら卒業式だって出席できるか分からない。受験も、日程によっては厳しいし、懸念点は他にもたくさんある。
抗争が始まってしまえば、俺らは動きが制限されてしまうから、今の内にやれることはやっておかなければ。
次話から初音視点が始まります。
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