94話 稼ぎ場
がたがたと揺れる馬車の中で座るリルとベール。
「うわぁ……本当に馬車だ」
「こんな風になってるんだね」
二人は景色や中を見つつPTチャットで会話をする。
そんな二人へと目を向けるのは当然、同じ場所へと向かうプレイヤーたちだ。
彼らも何かを離しているそぶりを見せることから、恐らくはPTチャットやギルドチャットを使っているのだろう。
話の内容は気になったが、特に何かをしてくるわけでもない。
リルたちは気にせずにそのまま話し込んでいると――。
「あ、ついたみたい」
馬車は停まり、辺りには鉱山らしき景色が広がっている。
「この中に居るモンスターを倒すんだよね?」
「そう、それじゃ早速行こうか!」
二人は短い会話を済ませると馬車から降り、ダンジョンの入口へと向かう。
当然他のプレイヤーたちも同じようにダンジョンへと向かい。
「人が多いなぁ」
中にも目的を同じくしているプレイヤーたちの姿が見える。
このままではまともに狩りもできないだろう。
「奥に行ってみよう」
当然奥に行けば行くほどモンスターは強力になるのだが、リルは思い切ってそうベールへと伝え。
一緒に奥へと向かう。
入口辺りはまだレベルの低いダンジョンなのだろう。
アクティブモンスターもおらず、奥に行くこと自体は難しい事ではなかった。
「なんか、暗くなってきたね」
暫く進むと灯もなくなり、暗闇が目立つ。
「確か、ここに……」
リルはおもむろにウィンドウを操作し、ランタンを取り出すと火をつける。
そして、それを腰へとつけ――。
「ほら、これで明るくなったよ」
腰へとつけたことで前は照らしきれないがそれなりに明るくなった洞窟内。
ベールはほっとしたように息をするとリルの傍へと寄り近づいてきて――。
「い、一緒に進もう?」
「うん、そうしようか」
さっきから一緒だったけど……リルはそう思ったが、口には出さずに共に歩き始める。
暫く歩いているとピッケルを持った男がよろよろと近づいてきた。
リルはその男を見るなり武器を構える。
「え? ちょ……」
突然の行動にベールは驚くが――。
「ベール構えて、モンスターだよ」
ピッケルを持った男の瞳は赤く染まっており、筋肉質な体からは想像ができないほどふらふらとしている。
本当に敵なのだろうか?
ベールが疑問に思っていた時――男はピッケルを振り上げ、リルへとそれを叩き落とす。
しかし、リルはそれをたやすく避けるとフェンリルを振りぬき男へと一撃を加えた。
「人型のモンスターだよ! ワーカーホリック……」
「し、仕事狂い?」
このリアルなゲーム内で敵だと判断できた理由は単純だ。
まず、敵であれば表示されるカーソルが違う。
そして――このワーカーホリックというモンスターは前作にもいたのだ。
「鉱石のレアアイテムを持ってるはず!!」
リルはそうベールへ向け伝える。
そう、前作でも大人気だったモンスターだ。
理由はリルが言った通り、鉱石のレアアイテムを持っているからだ。
「レアアイテム!?」
呆然とするベールの前で攻撃を避けつつダメージを与えてモンスターを倒したリルは振り返ると――。
「うん、確か鋼鉄とか金とか銀だったはず」
「鋼鉄がレアアイテム?」
首を傾げるベールだが、それも仕方がないだろう。
「鋼鉄は生産職以外は鉄と石炭を数個と交換だったから……こっちだと違うかもしれないけど、それでも高く売れるはずだよ」
リルはそう口にするのだが、手にいれたアイテムを確認すると――。
「……ん?」
首を傾げた。
何故なら鉄らしきものも金らしきものもなかったからだ。
いや、一体だけなら仕方がないのかもしれないが、彼女が首を傾げた理由は他にもあった。
「なにこれ……原石?」
そう、原石とだけ表記された謎のアイテムが手元にあったからだ。
「あ、私も持ってる……なんだろうね?」
オブジェクト化して、じっくりと観察するもよく分からないそれを二人はインベントリにしまい。
とりあえずは狩りを続けることにしたのだった。




