93話 鉱山へ
リルとベールはアイテムを買い足すと目的にである坑山へと向かう。
目的は勿論、ドロップアイテムだ。
それを手にいれて売り、ギルドホームの足しにしようという事だ。
リルはベールがはぐれないように手を繋ぎ歩き始める。
「リルちゃん、鉱山ってどこにあるの?」
ベールはそんな扱いに少し顔を赤らめながら質問をしてきた。
それに対しリルは「んー」っと口にしつつ、クロネコからもらった位置情報を確認する。
「街の外に馬車乗り場があるんだって、それから行くみたい」
これなら迷う必要はないねとリルが付け加えるとベールは目を輝かせながら、リルへと詰め寄り。
「馬車!?」
「え? あ……うん」
「って事は馬が見れるんだよね!」
どうやらベールは馬が見られることが楽しみのようだ。
しかし、このゲームの前作を知っているリルは……。
「たぶん、馬……じゃなくて羽トカゲだと思う」
「羽トカゲ?」
「うん、バードリザードって言うモンスターなんだけど、飛べないんだけど足が速いんだよ旧作では乗ったりできたんだ……確か馬車も引いてたはず」
過去の作品を思い出しながらリルはベールへとそう伝える。
するとベールは……。
「可愛いの?」
「うーん、可愛いかと聞かれるとまぁ、可愛いかな? 結構人気なモンスターだし、カッコいいって言う人も中にはいたよ」
そう言うとベールは明らかにわくわくとしているのが分かった。
「もしかしてベールって生き物が好きなの?」
「うん! 流石に虫とかは苦手だよ?」
尋ねるとすぐに帰ってくる返事。
だが……。
「でも、虫嫌いの割には……この前」
ニブルヘイムの解放の時にはそこまで苦手なそぶりを見せていなかった。
しかし、ベールは――。
「だってあそこはお化けの方が怖かったもん」
「……なるほど」
そう言えばそうだった。
そう口にしつつ、リルは見えてきた停留所へと指を向ける。
「やっぱり羽トカゲだ」
「わぁ……」
そこに居るモンスターは全身羽毛に包まれている二足歩行のトカゲだ。
目はくりくりとしており、リルが口にした通り可愛らしい見た目である。
だが、見方によってはカッコよくも見えるモンスターだった。
「あ、あれ飼えないかな!?」
「テイムってこと? どうだろうまだ実装されてないみたいだけど」
いずれ出来るようになるんじゃ? とリルは口にしつつ言葉を濁す。
なぜなら前作でも人気なモンスターだったからだ。
「どうしたの?」
「羽トカゲって高かったんだよね……」
「……そっかぁ」
がっくりと項垂れる彼女だったが、もしかしたらリルなら手にいれられるのでは? とも考えなおしつつ――。
「とにかく馬車に乗ろうか」
「うん! うん!」
ベールは嬉しそうに頷くとすぐに羽トカゲへと近づく。
そして、おもむろにその手を羽トカゲへと伸ばし撫で始めた。
『くるるる』
モンスターではあるの物の馬として扱われる大人しい種族という設定の羽トカゲは気持ちよさそうに目を細め、ベールにされるがままだ。
「リ、リルちゃん、この子可愛い!」
「う、うん……確かにリアルになってもっとかわいくなってる」
リルも思わず羽トカゲを撫でてみるのだが……ふわふわな手触りで何とも心地よいのだ。
「お嬢ちゃん達、乗らないのかい?」
突然聞こえた声にびくりと体を震わせた二人は辺りを見回す。
どうやら御者に話しかけられたようだ。
「あ……の、乗ります!」
リルは慌ててそう答えるとベールと共に馬車へと乗り込むのだった。




