92話 イベント情報
リルはクロネコがログインしたのに気がつくとすぐにメッセージを送る。
内容は勿論プチイベントの事だ。
暫くすると――。
「シィに聞いたの?」
扉をあけながらそう語りかけてくるのは勿論クロネコだった。
彼女はゆっくりと椅子へと座る。
そして――。
「さてと、プチイベントだったよね?」
クロネコはリルとベールを見つめる。
そして――。
「強化イベントだって聞いたけど」
「うーん、確かに強化イベントだよ? だけどね……二人には効果ないと思う」
クロネコの言葉に二人は首を傾げる。
だが、クロネコは呆れたように――。
「強化するって言ってもレベルを上げるわけじゃない、装備の素材が落ちるんだよ……でも二人、と言うか私達の装備だと新しく手に入る素材から作れるのは大してね」
「でも装備って」
リルはベールやクロネコへと目を向ける。
すると彼女は……。
「カナリアはトップ、それなりの装備があるし、トートはシィお手製、私はそもそも手に入る素材の装備じゃ相性が悪い」
「あ……そっか、ベールは今作ってもらってるし、必要ないんだ……だからお金稼ぎに良いって」
言われたのか……。
リルはそう続けるとベールの方へと目を向ける。
現状今回のイベントで恩恵がありそうだったベールもまたシィの装備を手にいれられる。
だが、疑問があった。
今日装備を買いに来た人たちだ。
彼らは何故わざわざプチイベント前に装備を買い付けたのだろうか?
「…………」
リルは気になりカウンターをノックする。
すると、装備の一覧が現れ一つ一つ調べていくと……。
「あ、これ、装備性能じゃなくて……」
「そ、ドロップ率が上がるんだ」
確かに値段を見て見ると強力な装備は桁外れに高いのだ。
だが、ドロップ率だけを上げるのであれば頑張れば手が出せる値段だ。
その事に気がついたリルは――。
「……まぁ、それでも買えないけど……」
がっくりと項垂れる。
ベールなら買えるだろうがリルにとっては大金だ。
それに下手に装備を崩すつもりもなかった。
なぜならリルの装備はセットで初めて効果が発揮されるからだ。
だからこそ――。
「数を狩ればいいか、それでどこに行けば……」
「うん、鉱山だねそこに居るモンスターがドロップするんだ」
「鉱山、か……」
また狭いエリアだなぁとリルは苦い顔をする。
するとクロネコも同じような表情を浮かべ……。
「私も役には立てないと思う、狭いから少人数で言ったほうが良いよ」
「なら私はベールと一緒かな」
「うん! リルちゃんと一緒ならどこでもいいよ!」
彼女はリルの言葉に笑みを浮かべてそう答えるのだった。
「多分二人のレベルより上位のモンスターがいると思うから、気を付けたほうが良いと思う」
「うん、ありがとうクロネコ!」
彼女へと礼を告げるとリルはベールの手を取り早速向かおうとする。
すると――。
「罠、買い忘れないようにするんだよ」
そんな忠告が聞こえ、リルは思わず「ぅぅ……」と情けない声を発してしまう。
前回はそれで苦労をしたわけではないが、砂漠の王の攻略はもっと楽になっていただろう。
それに加え、今回は罠を使うスキルが増えているのだ。
「わ、分かってる」
人が多い所では試してみることは避けたいとは思うが、性能は見て見たい。
そう思ったリルは顔を赤らめつつクロネコの言葉に頷くのだった。




