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8話 決闘

 大通りにつくとすでに人垣ができていた。

 それをかき分け、真ん中あたりに進むと男はリルたちの方へと振り返る。


「さぁ、公開処刑だ!!」


 へらへらと笑う彼らに対し、リルは大きくため息をつく。

 時間を見れば現在は23時……。

 思ったよりもずっと時間がたっていたのだ……。

 流石にお風呂に入って眠りたい時間にもなってきた。


「どうした?」

「別に……早く終わらせたいだけ」


 彼女のそんな態度にイラっと来たのだろう。

 再び乱暴に操作をするとリルの前に決闘を申し込まれましたと表示をされる。

 初日から変なのに絡まれた。

 そんな事を考えながら今度はYESを選択する。

 すると――。


『リルのパーティーとザンのパーティーの決闘を始めます』

「え? パーティー!?」


 そう、予想外の言葉がアナウンスされたのだ。

 てっきり一人だけだと思っていたリルは目を丸める。


「気が変わってな……そいつも一緒にボコす!!」


 剣を抜き迫ってくる男にリルはとっさにベールの前に出る。

 ナイフを構え攻撃を反らすと――。


「なっ!?」


 男は目を丸めた。

 VRゲームにおいて回避率、命中率というのは飾りでしかない。

 ほとんど本人のセンスの問題になるからだ。

 このゲームにおいてはシーフなら回避率に補正があるらしいが、それだとしても慣れが必要だろう。

 だが、攻撃をはじくのは違うのだ。

 殆どの場合ゲームシステムにそんな仕様が実装されていない、つまりやるとしたら完全にプレイヤースキル頼みとなる。

 普通に考えてそれは到底無理な話だ……だが、リルはVRで慣れていたこともあり見事それをやって見せたのだ。


「パリィ……だと!? そんなスキルは――」

「ないよ……」


 挑戦したものは何人もいるだろうが、成功したのはほんの一握りだろう……。

 だが、以前のゲームでもリルにとってそれは十八番と言えるスキルだ。

 にやりと笑みを浮かべたリルに対し男はギリギリと歯ぎしりを立てる。


『うわぁ……手が痺れる……どんだけSTRに振ってるの? というかこのゲームだとパリィ結構難しいかも』


 そうそう何度も使えないな……。

 そう思いつつ、リルはナイフを構えなおす。


「ベールは出来るだけ離れて! 隙があったら攻撃!!」

「は、はい!」


 そして仲間である彼女にそう伝え――。


「さぁ、始めようか?」


 リルは笑みを浮かべるが、正直に言えば余裕はない。

 いくらプレイヤースキルでは優勢だとしても、ステータスの差は歴然としている。

 彼らも装備を新調している……今のリルでは掠ったら終わると思ってもいいだろう。

 だが、リルは臆することなく敵へとナイフを突き立てた。


「へへ、女の攻撃なんて――」

「ゲームに女だの男だのは関係ないよ」


 男は堂々と攻撃を受けるつもりのようだ。

 だが、それが彼にとって不運だとは分からなかっただろう。

 突き立てたナイフは攻撃が当たると同時にダメージエフェクトを発生させる。

 すると――。


「へ? は!?」


 見る見るうちに失われていくHPにその顔色を変えていく……。

 よほど慌てたのだろうポーションを取り出すのだが、それを掴み損ね地面へと落ちガラスが割れるような音と共にアイテムは消失してしまった。

 しかし、これでリルがどれほどバカげた火力を持っているのかを理解したのだろう。


「嘘だろ? 装備だって整えたんだぞ!?」

「ありえないって……一気に減りやがったぞ……」

「ひ、ヒール!!」


 驚く男たちは焦るあまり、固まっていた。

 そんな中一人だけ動いたのだ。

 しかし、それが間違いだとは思わなかったのだろう。


「ベール!! ヒールを使ったやつを狙って!!」

「は、はい!! ファイアボール!!」


 リルの指示に答えたベールは炎の魔法を僧侶へと向け解き放つ。

 だが、それはファイアボールという初級魔法とは思えないほどの大きな火の玉であり……。


「……な、なにあれ?」

「ななななななななな!?」


 男たちだけでなく外野もあわてているところから普通ではないのだろう。


「ん~~~やぁ!!」


 やけに力が抜けそうな掛け声と共に放たれたそれは逃げる隙すら与えず僧侶を飲み込み――。

 文字通り溶けてしまったのだろう、魔法が消えるとともに僧侶の姿もなくなってしまった。


「ふ、ふざけるなよ!?」


 そう言いたい気持ちはわかる。

 リルは苦笑いをしつつ、呆然としている恐らくはタンクだろう大盾を持っている方へと近づき――。


「連撃!!」


 使い勝手のいい短剣のスキルをお見舞いする。

 すると当然、ベールの方は手薄になってしまう。

 剣士は笑いながら彼女へと近づき――対しリルは正反対に走っていく……。


「バカが!! これでこいつは終わりだ!!」

「悪いけどこれで良いんだ……これだけ離れればあんたたちの負けだから……」


 しかし、リルはベールを見捨てるつもりなんてなかった。

 連撃以上の攻撃スキルを手にいれたからだ。


「スナイプアロー!!」


 距離が遠ければ遠いほど火力が増すという特殊なスキルだ。

 だが、当てるには至難の業……当然外れてしまうだろう……リル以外は誰もがそう思っていた。

 しかし、放たれた矢は男へと吸い込まれていき――。

 VRでは咄嗟に回避するのは当然難しい、彼はその脳天を矢で貫かれるのだった。

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